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【浅野和生】台湾の国際生存空間を狭め人材吸引を目指す中国(3)

【浅野和生】台湾の国際生存空間を狭め人材吸引を目指す中国(3)
 -「東アジアユースゲームズ」台中市開催中止が示すもの―

『インテリジェンスレポート』9月号より転載

平成国際大学教授 浅野和生

「恵台31条」への台湾の反応

これに対して、台湾政府は3月16日に「壮大台湾 無畏挑戦」という対応策を打ち出した。
まず、台湾政府はその前言で、大陸の台湾政策は「名為恵台 実則利中(名前は恵台であるが、実は中国の利益)」であると述べ、その目的は、中国大陸の経済発展が遭遇している困難を乗り越えるために、台湾の技術、資本および人材を惹きつけて協力させようとすることだと喝破した。
しかも、31項目の内すでに措置されているものが14項目、実施されている措置を拡大するものが10項目で、新たな事項は7項目に過ぎない。つまり、31項目の「恵台」政策というが、羊頭狗肉であって、実は新味がないと指摘した。台湾の技術や資金や人材を惹きつけるためにズラリと新たな施策を並べたいところだが、新事業は7項目しかないので既存の施策をいろいろ加えて「31項目」に水増しして、大型政策の実施のように演出したのである。
これに対して台湾政府は、「四大方針と八大台湾強化策」で対応した。
台湾政府によると、「恵台31条」は内容によって8種類に分類される。第一は、台湾企業による投資に関する事項である。これは「恵台31条」のうち5項目だが、すべて既に実施されてきた措置で新しいものはない。なお、台湾には大陸投資に審査制度があるので、大陸側が台湾からの投資を開放するといっても、その通りに台湾企業が投資を認められるわけではない。特に、道路、鉄道、上下水道、空港、都市交通と発電所や配電設備などのインフラ建設については、台湾政府は大陸への投資を禁止している。一方、台湾は投資に適合する環境整備を進めて、ハイエンドの製造業や研究開発部門が台湾に留まるよう促している。
第二に、土地取得および税制における優遇措置3項目であるが、いずれも新施策ではない。中国は台湾企業による土地取得を奨励して台湾企業の進出を求めているが、台湾政府としては投資環境を整備し、工業化地域の容積率を引き上げ、企業が台湾に留まるよう促している。また、中国は高度技術産業について15%の優遇税率を示しているが、台湾の営業税は20%で優遇措置を加えると実質13~14%であって中国大陸より低い。
第三に銀行、金融に関する事項4項目であるが、すべて既存の措置である。そもそも、台湾の金融の安定のためには、中台間における銀行業務の開放は慎重かつ漸進的に進める必要がある。また、台湾の信用調査機関が掌握している企業情報が流出しては危険なので、国内企業や民間の信用情報の保護を維持しなければならない。
第四は、教育に関する事項6項目で、このうち5項目が新たな措置である。これらは、主として教育、研究関係者に職位あるいは資金の支援をすることで、台湾の研究人材を大陸に引き寄せ、あるいは技術や知的財産を吸収しようとするものである。ところで、台湾の学術研究環境は自由であって、研究の基盤はしっかりしており、研究者には完全な自主性が認められていて、この点で人治かつ一党独裁の中国とは全く異なっている。さらに、2018年開始の台湾の「玉山計画」は、研究を深化させるために資金援助することとしており、また国立大学教授の研究費を10%増額するなど、台湾の研究人材を台湾に留めることを目指している。
第五および第六は、文化および映像産業に関わる措置8項目で、このうち3項目が新措置である。
 中国では映画、テレビその他映像作品は、番組・作品内容に厳格な審査が実施されており、テーマについても制限がある。したがって、今日、台湾で自由に作られている作品や番組には、審査に通らないものが少なくない。台湾の映像関係者が中国への参入、対中傾斜を強めると、中国政府の審査に適合する作品を作ろうとして、台湾の文化創造、映像作品制作に悪影響が出ることが懸念される。
 最後に第七は、公益および医療関係事項5項目で、このうち新施策は一つもない。台湾では医療従事者の社会的地位が高く、待遇も安定しているので、台湾で医師資格を取得した者が台湾で医療に携わることが望まれる。
 以上を見ると、経済関連施策はほとんど既存の施策の焼き直しに過ぎず、新たな対台湾政策は、主として研究者の就業と資金の支援に関わる項目と医療従事者、映像産業に関する事項だとわかる。要は、中国の今後の発展のために不足する研究者や医療従事者を台湾から調達するとともに、台湾の人材を吸引し、新規技術開発にも活躍させようということである。
 したがって、台湾政府の施策は(1)優秀な学術研究者を育て台湾に留める、(2)グローバル社会の中で台湾の優位を維持する、(3)資本市場を深化させる、(4)文化、映像産業を強化する―を四大方針とした。
 八大台湾強化策の第一は、学術研究者の支援と研究の奨励である。高度な研究を進める研究者を台湾に留めるため、弾力的な給与制度を拡大するとともに研究費を引き上げ、また「玉山計画」を推進して若手研究者を養成し、国際的に優秀な人材を育てる。重点産業については1000人の博士号取得者の就業を進めるなどの7項目を決めている。
 第二に、イノベーションの促進を強化することである。このため、税制優遇措置をとり、10億元の資金提供を用意している。
 第三に、従業員に対する報酬についてである。台湾としては、産業イノベーション条例などによって、従業員の報酬として500万元までの株式を報酬として供与できるようにするほか、イノベーションへの個人投資では投資金額の50%の限度内で所得控除ができるなどの優遇措置を講じている。
 第四に、医療従事者の優遇措置である。就業環境の改善を進めるほか、医療従事者の給与と福利の向上のための立法措置を進め、医療事故への予防と対応を整備するなどリスクを軽減して、医療従事者が台湾に留まるようにしている。
 第五に、営業の秘密保護の強化である。台湾としては、中国、香港、澳門を拠点とした情報漏洩に関わる犯罪について捜査を強化し、秘密保護に努めることとしている。
 第六に、産業の高度化の推進、第七は、証券取引市場の拡大等、そして最後の第八は、映像産業の強化である。台湾での映像作品の制作の基盤を強化、拡大して、台湾文化の振興を図ろうとするものである。このため、合計100億元規模の資金を投資して、映像産業のための文化金融体系を強化する。
 以上のように、台湾は主権独立国家として自由、民主、法治を核心的価値としているところが大陸に対して優位な点であり、また大陸との最大の相違点である。したがって、台湾の政府としては、経済の自由を保護し、台湾の人々の人権を守ることで、各人の能力を発揮してもらえるようにする。こうして、グローバル化の進展で国際競争が深化する中でも、台湾の優位な点を活用し、自信をもって積極的に行動し、台湾の人々が一致団結すれば壮大な台湾を実現でき、挑発を畏れることはない、と説明した。


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