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【浅野和生】「中国の台湾吸収策は失敗する」

【浅野和生】「中国の台湾吸収策は失敗する」

自由と民主なき国の限界
「恵台31条」の狙いは完全統一

                     平成国際教授 浅野 和生

 2期目を迎えた習近平政権が最初の全国人民代表大会を前にした2月28日、中国政府は台湾海峡「両岸の経済文化交流協力を促進するための若干の措置(關於促進兩岸經濟文化交流合作的若干措施)」を発表した。台湾では「恵台31条(31項目の台湾“優遇”政策)」と称されるこの政策は、対象を企業から、学生、教師、医者、芸能関係者、出版にまで広げて、台湾の人材を中国大陸に吸引しようとしている。

 昨年10月の第19回中国共産党大会において、習近平総書記は、台湾海峡の「両岸は一家」という理念で、台湾の「同胞」には、大陸の「同胞」と同等の待遇を提供すると述べた。その方針を具体化するのが、「恵台31条」である。

 しかし習近平の対台湾政策の目標は、あくまでも「一国二制度」による祖国の完全統一の実現である。つまりは、「恵台31条」は、このゴールを目指す、武力によらない台湾併呑方略である。

 この対台湾「優遇策」には、2013年6月、1期目の習近平政権と、国民党・馬英九政権との間で署名された「海峡両岸サービス貿易協定(海峽兩岸服務貿易協議)」の前例がある。当時、中国側が台湾に開放するのは80分野で、台湾が中国に開放するのは64分野なので、台湾にやや有利な協定だと馬政権は説明した。しかし、台湾の人びとには、協定によって中国人労働者が流入すれば台湾人の職場が奪われること、食品、生活用品、新聞、金融、医療など1000業種以上の中国企業流入で、生活の安全や健康が脅かされる懸念があった。

 周知の通り、この協定は14年3月の学生たちによる立法院本会議場占拠事件、いわゆる「ひまわり学生運動(太陽花学運)」によって頓挫した。しかし習近平政権は諦めず、2期目には中台交渉による合意が不要な一方的措置を採ることにしたのである。

 「恵台31条」には、「中国製造2025」に参画する台湾企業を税金や投資などで優遇すること、一定のハイテク企業に15%の軽減税率を適用すること、台湾企業がエネルギー、交通など公共工事等のインフラ建設や政府の入札に参加できること、台湾人学生が政府の各種奨学金を受けられること、などが含まれている。さらに大陸の映画配信機構、ラジオ・テレビ局などは、台湾で制作された映画、テレビドラマを数量制限なしに導入できるという、前回よりバージョンアップした内容だ。

 しかし、習近平政権は同時に、団体観光客の台湾への渡航証発行を大幅に制限するという「害台」政策も実施している。台湾を訪問する大陸観光客は、馬政権下の15年に412万人余を記録した。しかし、「1992年コンセンサス」を認めない蔡英文政権に圧力を掛けるため、中国は台湾行き渡航者数を、2016年には351万人、昨年は273万2549人へと、2年で140万人も削減させた。今年は、100万人を切るとも言われている。いくら東南アジア、日本、韓国からの渡航者増でその影響は緩和されると言っても、100万人単位の減少が続けば、経済、特に観光業に悪影響がないはずがない。要は、習近平政権に「恵台」の意図がないことは明らかである。

 第2期習近平政権の、この強引なやり方に対して。台湾の行政院長・頼清德は不快感を表し、去る3月13日、この政策が対台湾統一戦線工作の一環であることを明示するため、政府の各機関は「恵台」ではなく「対台」と呼ぶよう指示したことを明らかにした。

 ところで、台湾は民主的で自由な社会となって30年経っている。顔認識のできる監視カメラが1億7千万台以上設置され、インターネット空間も共産党支配下にある中国に、台湾の人々が本気で引き付けられる状況にはない。

 例えば、馬英九政権2期目が始まった12年、中国へ渡航した台湾人は約314万人で、日本への渡航者約156万人のほぼ2倍であった。それが3年後の15年には対日渡航者数が激増して対中渡航者数を上回り、17年には、対中渡航者393万人に対して、対日渡航者はおよそ462万人に増大して、その差を拡大した。つまり、政府統制無しの自由な台湾人たちは、その渡航先として、経済発展が著しく言葉が通じる中国大陸より、経済が停滞気味で、言葉が通じなくても、自由で居心地の良い日本が好きなのである。

 習近平の中国は、内国民待遇で台湾の人びとの気持ちを引き付け、台湾の「国内化」を既成事実にし、合わせて台湾の人材を吸収しようとしている。しかしそもそも、中国の「内国民」は、共産党の軛(くびき)の下で、ジョージ・オーウェルの『1984年』のような社会に暮らしている。さらに、中国共産党は昨年8月、大企業およそ3200社に対して「(共産)党組織を設置し、経営判断は組織の見解を優先する」という項目を年末までに定款に盛り込むよう要求した。こうした政府による経営介入強化措置は、台湾企業にも当然に及ぶだろう。

 いずれにしても、習近平共産党の一党独裁下で社会生活全般の管理強化が進む中国は、自由と民主の台湾の企業や人々が、甘言に乗せられてうっかり出て行きたくなる世界でないことは、旬日を経ずして明らかになるだろう。

 中国の「台湾吸収策」は、結局のところ、失敗に終わるしかないのである。


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