デンマーク艦隊引渡請求事件の正当性と自衛権
はじめに・・・
東シナ海、南シナ海の緊張度が日に日に増している。毎年二桁以上の軍拡予算、尖閣列島における領海侵犯、南沙諸島における米中艦船衝突、海南島原潜基地増強、航空母艦保有宣言等、シナ共産党は着々と東太平洋における覇権を握ろうとしている。
米国はオバマ政権になり核戦力大幅削減を公言しており、日本は今までの核の傘に安住することはできない。
「台湾は日本の生命線」は言うまでもないが、中共軍が武力行為如何を問わず台湾を侵略・併合した場合の駐留台湾戦力がそのまま日本に差し向けられる危険がある。日本はこのシュミレーションを想定し対処する準備を本格的に進めねばならない。
シナ共産軍はかつて朝鮮戦争で捕虜となった中国国民党軍を背中から銃剣で脅して強制特攻尖兵とした。同じく併合された台湾軍はシナ共産軍の身代わりとなって日本あるいは米国に対する一次攻撃の捨て駒として使用される。「歴史は繰り返す」である。
歴史を遡ればナポレオン率いる大陸フランス帝国と島国海洋国大英帝国との戦争にたどり着く。英国は海上封鎖を実施し経済制裁を加えた。これに対し仏帝国海軍は1805年10月 ジブラルタル沖のトラファルガー海戦で敗北し、制海権を失う。しかし2ヶ月後 アウステルリッツ会戦で仏帝国陸軍は露・墺連合軍に勝利し、中立を保っていたデンマークを侵攻・併合化を意図した。デンマークはイギリスに次ぐ強力な艦隊を保持しており、仏軍がデンマークを攻略しデンマーク艦隊を接取できればイギリスへの再び大きな脅威となる。英国はデンマークに艦隊の引渡しを求めたが、中立を盾に拒否したため英国は艦隊を出動させコペンハーゲン市内を砲撃、デンマーク艦隊を拿捕し英国に持ち帰った。
国際法上、デンマーク事件は遠い過去の事象のように思えるが現在でも自己保存の原理として法理論的には違法ではない。また中立米国領域内における英仏軍の衝突事件であるアメリア島事件(1817)、キャロライン号沈没事件(1839)も同様である。この場合でもさし迫って圧倒的な自衛の必要があり、手段の選択の余地なく、熟慮の時間もなかったことを示す必要があれば有効とされた。(その後国際法上、ウェブスター定式といわれる)
戦後の法解釈によると、自己保存の原理は国連憲章の自衛権の構成分子となった。 「いわゆる自己保存に必要な措置のうちには、急迫した不正の危害に対して防衛するという措置も含まれうる。この措置は、特別な権利としての性質を持っている。その限りで、いわゆる自存権も正当な分子を含んでいると言うことができる。この分子こそ、自衛権と称されるものである」として、制限された自己保存権の概念が自衛権であると主張する(横田喜三郎「自衛権の概念」『国家学会雑誌』第64巻第5・6号(1950年)22頁)。ウェストレーク(Westlake)は、「他国による攻撃、攻撃の脅威もしくは合理的に考えて攻撃するという意思が理解されるような攻撃準備やその他の行動」に対して、その誠実な判断において必要であるならば、防止的手段によって(by preventive means)「自衛権」を行使しうるとする。その行為が侵略的ではなく防衛的態様とされる。
以下、国連憲章の観点から述べてみる。
@国連憲章における「自衛権」解釈からの妥当性
国際連合(以下、国連)が設立され、国連憲章第2条4項は、「すべての加盟国は、その
国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、
また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」と規定し、武力による威嚇と武力行使を原則的に禁止した(11条)。
但し@国連憲章では武力行使は自衛権の発動と国連の制裁処置以外禁止されている。(51条)
国連憲章51条には自衛権が設定されている。自衛権発動根拠には2つあり、正当防衛と自己保存のための緊急避難行動の点で認められている。緊急避難とはある国が急迫した危機に遭遇しこの危機を逃れるために他の方法がない場合、危難の発生について責任のない国の法益を害することのできる権利である。デンマーク事件はこの国際法理論の根拠にたつものである。但し第三国が被った被害は補償することが要求される。
A国連憲章53条に国連統制の例外として集団的自衛権が認められている。
地域的安全保障体制自衛のための武力攻撃では妨げない。理事会が必要な処置を直ちにとらない場合、事前に理事会の許可は不要である。日米安全保障に関しても地域安全保障体制に入り、緊急避難により米国と日本は共同して台湾防衛ができる。
B日本国憲法下で自衛権を立法化できるか?
日本において国連憲章で認められた自衛権発動根拠の正当防衛は認められる解釈(9条2項は別)になっているが自己保存のための緊急避難行動は議論されていない。これは国連憲章では集団的自衛権が認められているにも関わらず、日本政府は解釈として認めないことになっているによるものである。単なる内閣法務局の解釈だけで手足を縛られているのが現状で、日本の集団的自衛権保持については国際的にもなんらいちゃもんをつけられる根拠はない。
また法理論的にも国際司法裁判所(ICJ)の見解では国際法は国内法に優越するとされ、条約法27条 条約の不履行を正当化する根拠として国内法を援用とすることはできないとされている。国内法さえない解釈論に縛られることは一切ない。
また日本国憲法98条に条約、国際法規はこれを誠実に尊守すると明記され、憲法より下位であるが法律より上位の効力をもつとされる。この国連憲章、ICJ、憲法98条
を錦の御旗にすれば、自己保存のための緊急行動ならびに集団自衛権の立法化は可能である。日頃、国連重視を述べる左翼勢力に対し十分反論・対抗できる。
C日本は具体的にどうすべきか?
当時のフランス帝国が中国、デンマークが台湾と置き換えれば台湾戦力がそのまま日本に差し向けられる同じ構図と言える。
日本はシナ共産軍による台湾侵略・併合を想定し、抑止対抗措置をとらねばならない。これは自衛権の成立根拠である自己保存のための緊急行動に該当する正当な権利である。
自己保存のための緊急行動を行う対処として
@ 周辺国(フィリピン、ベトナム、米国、台湾)との東シナ、南シナ海の集団的自衛権の確立
A 防衛予算の拡充、特に島嶼基地の陸、海、空の充実化を図る。
B 憲法改正または自主新憲法制定すすめるための保守政治の確立
C 米国核による抑止力強化
海軍兵力、島嶼駐留軍の増強は当然であるが、最終的な抑止として米国からの核のレンタルが現実的である。NATO独軍は緊急時に米国の核を使用する協定を結んでおり危急時に備え独軍は米国核兵器使用訓練を常に行っている。
日本はシナ共産軍、北朝鮮軍の核兵器の脅威にさらされている。しかし今までように米国の核の傘に頼る時代はもう過ぎ去ろうとしている。軍事力ではまだ圧倒的な地位を占めているが、イラク戦争以来米国は日本のために米兵が血を流すことはない。日本自らが自分の国を守るために抑止力を持たねばならない。
「戦争とは他の手段による政治の継続である」 クラウゼビッツ「戦争論」の言葉より
参考図書 有為閣 「国際法」より
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