_塚本三郎元民社党委員長小論集_ _当会支部最高顧問、塚本先生世評_

天の摂理           平成二十一年三月下旬 塚本三郎 

民主党代表・小沢一郎氏の公設第一秘書が、東京地検特捜部に逮捕されたことは「小沢ショック」として、与野党内に大きく波紋を広げた。「私は潔白」と協調する小沢代表は、身の潔白と共に「国策捜査」を強調し、政府に強く反発した。

東京地検特捜部は《国策捜査》という批判に敏感に反応したのか、捜査の矛先を、自民党へも急旋回させたようにみえる。

 小沢一郎・民主党代表が反論の記者会見を開いた3月4日の夜には、永田町に激震が広がり、〈自民党など5人の議員の会計責任者らが、特捜部の任意の事情聴取を受けている〉­­――との情報さえ流れ、今度は与党内にも衝撃が広がった。捜査は次にどこに向かうのか。

政界で正確な情報を、事前に得られる立場にあるのは3人とみるのが常識だ。

 麻生首相と、側近の森英介・法相、河村建夫・官房長官の3人である。

小沢氏への強制捜査を、右の3人は事前に知らされていたはずであり、今後の政界捜査の「ターゲット」もわかるはずであろう。いざとなれば、首相から法相への〝指揮権発動〟で捜査を止めさせることも不可能ではない。かつてそれが行われたことがある。

某週刊誌は断定する

 麻生首相が、その情報力をフル活用するようになったのは、郵政民営化見直しの発言からではないか。小泉元首相が、麻生首相との対立姿勢を鮮明にすると、麻生首相は、側近の鳩山邦夫・総務相に、日本郵政による「かんぽの宿」売却問題の徹底解明を指示した。

鳩山総務相は「日本郵政への立ち入り検査も考えている」と発言し、小泉元首相側の動きを封じ込めた。

小泉元首相鎮圧に続く小沢氏秘書逮捕は、一見、民主党潰しに見えるものの、自民党内にこそ《麻生官邸に逆らえば司直が動く》という不気味さを植え付けたのである。

 見逃せないのは、それに続く小沢氏秘書逮捕という〝司直案件〟が、民主党ばかりでなく、自民党内に強い衝撃をもって受け止められていることだ。

 事実、党内にあれだけ高まっていた〝麻生降ろし〟の風がピタリと止んだ。「ポスト麻生」の最有力候補として浮上していた与謝野馨・財務相擁立の構想さえ、掻き消えてしまったようにみえる。

 一方で、民主党が「国策捜査」という見方を変えないように、検察の捜査のやり方に不自然な点が多いことも事実である。

 まずタイミングだ。小沢氏の秘書逮捕は、与党内から、小泉元首相らの造反が予想されていた、2兆円の定額給付金の財源をめぐる法案を再可決する前日だった。

 民主党は再可決後、内閣不信任案の提出を検討しており、自民党内では、「麻生首相では選挙を戦えない」という声が公然とあがっていた。仮に不信任案への同調者や欠席者が出れば、麻生政権の崩壊につながっていく可能性もあった。

政治的に極めて重要なタイミングで、野党の「不信任案提出」をつぶすように捜査に着手したと見られても仕方がない。

 政治アナリストの伊藤惇夫氏はこう指摘する。

 「検察には従来、政治状況に影響を与えないように、慎重に捜査の時期を選ぶという考えがあった。ところが、今回は政権交代の是非、日本の将来に影響を与える行動だ。それには強い違和感を感じる」以上(週刊ポスト誌)この記事は、余りにもできすぎている。

火の無い所に煙は立たぬ

 政治資金規正法によって政治献金は、全面的に禁止されている。その代わりに、政党助成金の制度が創設された。国民一人あたり、コーヒー一杯分として、国会議員一人に対し年間約三千万円が、所属する政党に交付されている。

 政治家個人と、政策立案及び、行政に対する政府の関与と、それに伴う黒い金の出口が全面的に禁止された。併し、政治団体間のやりとりと、少額のパーティー券による集金が抜け道として作られたようだ。

 次の二点は犯罪捜査の常識と考える。

一. 単独犯罪は、犯罪として立件するに容易ではない。

複数犯、即ち、仲間や、相手の居る犯罪は捜査しやすい。一方を逮捕隔離する

二. 大きな犯罪は、首謀者が居て、手下が犯罪を実行する。

犯罪の実行に手を下さなくとも、その「実行の計画」に加わって居れば、実行者と同様の共犯者となる(共謀による共同正犯)

政治献金は、受ける側の政治家が、法の抜け道として、政治団体を作って、受け皿としている。一方、献金する側も又、架空の団体を作り、相呼応して法の抜け道としている。

出す側も、受ける側も、それが為に禁止された政治献金を、法律の網にかからなければ良いと考える。このような、退廃した金にまつわる政界がどこまで許されるのか。

出す側も、受ける側も、何の因縁もなく、無関係に多大の金額が献金されることは常識にない。だから、お金のやり取りが露呈されれば、共犯はすぐにバレル。これは犯罪捜査の常識である。とりわけ、多くの自民党議員の卑しさが目立つことは残念。

日本の法律は、常識に基づくルールであり、非常識は許されない仕組みになっている。

素晴らしい人格者、優れた手腕の政治家、そして期待される政党には、献金を行なうことは美徳であり、民主政治の土台として期待する。だが、それが度を超し、逆に汚職に連動した歴史の反省から、その代替として生まれたのが「政党助成金」であったはすだ。 

今日の手厚い、政治資金制度をも、泥沼の中に引き込んだことは許されない。

政治活動に、資金の要ることは、承知している。それにしても、今日の政治家と政党に注いでいる税金は、国民生活の常識に無い程の過大さである。

政治活動とて、一般の社会生活の中での活動である。そして、活動のルールも極めて常識的に決められている。そのルールに従えば、「充分に足りる金額」が政党助成金として支給されていると信じる。それなのに、更に法の網を潜り抜けての資金調達は、お金を使うその方法にも、法律違反が重なっているのではないかと疑う。

政治は最高の道徳である

 政治家は、法律に違反さえしていなければ、不道徳な行為でも許されるのか。

 自分達の行なった、不道徳な行為を摘発する検察に、不公正な捜査だと、開き直る姿は、余りにも卑しい。

 不正の行為や虚偽の記載によって、法律違反を免れようとする政治家達が、それを摘発せんとする検察の「手段の不公正」を非難するのは、筋違いではないか。

 日本の社会は、法治国家であるが、その前に、常識と調和と友情の社会である、如何にグローバル化が普及し、欧米と同じ法律社会であっても、日本人としてのモラルが厳然と存在する。法の前に「道徳と倫理」があり、「天の摂理」がある。

 その実践者であり、指導者こそ、政治家であるべきだ。それを、多数決の民主政治なるがゆえに無理だと逃げて良いのか。民主政治であっても、非道徳は許されない。

 政権を目前にしている民主党が、政府と対立することは止むを得ないと認める。

だが、百年に一度と呼ばれる大不況に直面して、不況に煽られ蒼白になっている国民に眼をつぶり「権力を自分達に渡せ」、その為にまず国会を解散すべきだと連呼している。

マスコミは倒産件数を連日訴えて、政府の救済を求めている。不充分であったとしても、その対策を、一日でも、速やかに進めることは、決して自民党を助けることではない。

 政党の使命は何かは論ずるまでもない。

 野党の議員が、自分達のことはどうなろうと構わない、政府として、政党として、政治家として、出来ることは何でも速やかにやりなさい、我々は協力する、と主張するのが日本の政治家ではないのか。国民は、政党政治の温かい行動を、身を震わせて期待している。

 どの党が、どの政治家が、国民の期待に応えてくれるかを、じっと見ている。

苦境に貧しつつある国民は、いまほど政治に対する鋭い眼を向けている時はないと、与野党は、国民の憂いを正視すべきである。

危険水域に入った日本

 米国の実力と権威の衰退が、眼に見える形で崩れつつある。それは自業自得と云うべきか。だが、それと行動を共にして来た日本丸は、共同の運命にあると、あきらめる訳にはゆかない。米国に寄り掛かって来ただけに、米国以上に危険水域に立たされている。

日本は独自には自立できないように、仕組まれた不戦憲法を抱いたまま、米国に外交と防衛を委ねて来た。独りでは自立できない国家のままだ。

既に六十年余に亘って、そんな体制のまま過して来た。その大黒柱の米国の衰退が、そのまま中国の独裁政権が脅威として、日本の前面に立ちはだかりつつある。

 その一面は経済による不信の数々である。とりわけ、毒入りの食品や模造品について、既に警鐘が乱打されており、経済界も、一般国民も、十二分に理解し、警戒を怠らない。

問題は、外交と、安全保障に関する脅威である。

 心あるメディアは、次々と日本に対する中国の脅威に警告を発している。例えば

  見えてきた、日本内部崩壊

  外国人参政権付与で中国の日本支配は完了する

  自衛隊は内にも、外にも問題ばかり

  中華帝国のニッポン侵略シナリオ

  さらなる牙をむき出しにする中国

  米中「安保」で窮地に立つ日本

 これ等を論ずる筆者達は、今日の政界に「たまりかねて」大胆に警告を発したと読みとる。

屡々論じて来た如く、中国の独裁政権と腐敗に満ちた党幹部の汚職、及び果てしなき公害のたれ流しは、人民の我慢の限度を超えている。国内暴動は、ひとりチベットや新疆人民に止まらない。その人民の不満の捌け口を日本に向けて来つつある。

筆者達の論点は、危険な中国権力の野心である。全体主義は危機を待望している。

政党政治が本来の機能を喪失すれば、恐るべき、左、右どちらかの全体主義政治を招きかねない。それとも、まさかこのまま「中国に呑み込まれてしまう」のか。