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95歳の李登輝がいま「台湾独立」を呼びかける意味  黄 文雄(文明史家)

【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」第230号:2018年4月10日】http://www.mag2.com/m/0001617134.html

*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部で付したことをお断りします。

◆昨年11月に郭倍宏氏から直接聞いた「喜楽島聯盟」結成の話

 95歳になってもなお李登輝氏の勇姿は変わらず、新たな動きを見せてくれました。以下、報道を引用します。

<台湾独立に向けた公民投票(国民投票、住民投票)の実施や「台湾」名義での国連加盟を目標とする政治団体「喜楽島連盟」が7日発足した。南部・高雄市で開催された記者会見には李登輝元総統が出席し、団体に対する支持を呼び掛けた。

 同団体の発起人は、政治団体「台湾独立建国連盟」米国本部の元主席で民放テレビ局「民間全民テレビ」(民視)の董事長(会長)を務める郭倍宏氏。会見には陳水扁元総統がビデオメッセージを寄せ、黄国昌・時代力量主席(党首)らが参加した。

 李元総統は、台湾では4分の3余りの人々が自身を「台湾人」だと考えていることに言及。人々が世界に向けて勇敢に声を上げ、中国大陸の脅威を解消することを願っているなどと述べた。

 4月7日は民主運動家の鄭南榕氏が言論の自由を訴えて焼身自殺した日。鄭氏の娘、竹梅さんも会見に駆け付け、鄭氏の言葉を引用しながら、開かれた議論や公民投票の重要さを訴えた。 同団体は来年4月6日の公民投票実施を目指すとしている。>

 2017年11月、私は小さな集会に参加した際に、郭倍宏氏が「喜楽島連盟」をつくるという話は聞きました。彼は、もしも民進党政権が中華民国の体制にしがみつくようなら、絶対に行動に移すと言っていたのでした。そのため、このニュースはいつかは聞くことになるとは思っていましたが、こんなに早く耳にすることになるとは予想外でした。

 私は、今の民進党政権は台湾の歴史の中においての過渡期を担っていると思っています。70年にもわたる国民党統治の弊害はかなり大きく、国民党が築き上げた「華僑王国」のすべてを短期間で変えるのは無理があります。まずは、蔡政権は次の2つのことを実行してくれれば、歴史的役割は充分果たしたことになると私は考えています。

 ひとつは、「九二共識」を拒否し続けること。もうひとつは、国民党に所属する「中国人」が牛耳っている司法を台湾人の手に取り戻し、真の法治社会を実現することです。この責務さえ果たせれば、蔡政権の台湾統治は大成功だと評価するに値します。逆に、それ以上を求めてしまうと、せっかくいい政権がダメになる可能性もあります。

◆アメリカが台湾を後押ししている今だからこその行動

 何事も慎重に、用意周到に進めてきた李登輝氏がここまで来る道のりは長いものでした。記事の最後に出てきた鄭南榕氏は、世界史上最長と言われる戒厳令(1949〜87年)の真っ最中に、台湾独立を声高に叫んだ信念と勇気と情熱の人であり、戒厳令が解けても変わらぬ国民党政治に風穴を空けるべく1989年に自殺しました。

 去年、蔡英文総統は「白色テロ」と呼ばれる戒厳令期の弾圧に関し、調査を進める専門家委員会設置などを盛り込んだ法案の早期成立を目指すとの声明を出しました。

 記事によれば、白色テロの間に出た逮捕者は数万人、処刑者は2万人超。「ただ、調査が不十分で全容は不明。台湾文化部(文化省)によると、これまでに7000人以上が補償金を受け取ったが、被害者の一部にとどまる」とのことです。

 当時の資料は膨大で、それらを整理し、解明するには専門家のかなりの人手と時間が必要となります。白色テロ時代の恐怖政治からわずか30年ほどの短期間に、李登輝時代に経済成長を遂げ、蔡英文時代を迎えたのです。

 私も、台湾独立連盟に所属して長年独立運動に関わってきました。戒厳令時代は日本に亡命していたために、しばらくは台湾に帰ることもできませんでした。しかし、その間も仲間たちと連絡を取り合い、互いに助け合いながら台湾独立を目指して活動し続けてきたのです。

 私が日本に亡命してきた頃の1970年代は、仲間たちはみな赤貧でした。私もパチンコ屋でアルバイトをしたこともありました。それでも志は高く、台湾独立という目標が我々を支えていました。今となっては皆出世して有名人になりましたが、恐らく皆、かつての苦しい時代を経てきたことを誇りに思っていることでしょう。そんな仲間たちもだんだんと高齢になり、天に召された人もいます。私もいつの間にか高齢者ですが、まだまだ書きたいという気持ちはあります。

 李登輝氏が台湾独立を問う住民投票を行いたいと言うならば、台湾にはもうその時が来たということでしょう。アメリカのトランプ政権が台湾というカードで中国を揺さぶろうとして、台湾旅行法を可決したり、台湾の潜水艦自主建造計画に米企業の参加を許可したりと、台湾を後押ししている今だからこその行動なのかもしれません。

◆台湾の魅力をもって中国の暴力に対抗する

 しかし、台湾独立に関する住民投票は政府主導でなければ意味がないことは常識です。小さな台湾が、中国にどう対抗すればいいのかについては、60年代から台湾人の専門家たちが研究し続けてきました。

 そして、対抗すべき要素は、物理的、社会的、心理的の3分野に分けられることがわかりました。さらに私は、長期的に対抗するには「魅力をもって暴力に対抗する」方法が重要だと常に主張しています。

 もちろん、核兵器を含む軍事的驚異に対抗するための軍事力の強化も必要ですが、ソフトパワーを持たない中国にはソフトパワーで対抗するのが最も効果的だと思います。言論統制、思想弾圧を強化している中国に対して、自由で魅力的な言論や思想、コンテンツを世界に発信していくのです。

 中国人ですら、生まれ変わっても中国人になりたくないと思う人が6割もいるのです。人権も人間としての尊厳も守られない中国と、自由闊達に自分の意見が述べることができ、優れた文化を生み出せる国とでは、どちらが魅力的かは言うまでもありません。

 とにかく、李登輝氏を筆頭に、台湾独立に人生を賭けてきた我々にとって、こうしたニュースは実に感慨深いものがあります。台湾の前途は明るく、中国にそれを妨げることはできません。


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・2007年 李登輝前総統来日特集「奥の細道」探訪の旅(2007年5月30日〜6月10日)
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