8389人によるNHK集団訴訟をNHK含む全メディアが報道

記者会見には小田村四郎会長や中村粲氏などが出席

 昨日、4月5日放送の「NHKスペシャル シリーズ『JAPANデビュー』・第1回『ア
ジアの“一等国”』」をはじめ、番組製作・放送において著しい偏向報道や歪曲、捏造、
印象操作等を行いながら、国民からの抗議や批判にも不誠実な対応を改めようとしないN
HK に対し、8389人が原告となって1人当たり1万円の損害賠償や慰謝料を求めて提訴し
ました。

 午後2時から東京・霞ヶ関にある東京地裁内の司法記者クラブで開かれた記者会見には、
25人の弁護団を代表して弁護団長の高池勝彦氏、荒木田修氏、尾崎幸廣氏、田中禎人氏、
溝呂木雄浩氏の5人のほか、原告を代表して、小田村四郎・日本李登輝友の会会長(前拓
殖大学総長)、中村粲・昭和史研究所代表、水島総・日本文化チャンネル桜社長、松浦芳
子・草莽全国地方議員の会会長(杉並区議)、西村幸祐・評論家、柚原正敬・日本李登輝
友の会常務理事などが出席し、提訴の理由などについて説明しました。

 この訴訟は「薬害スモン訴訟」(7561人)や「第四次厚木基地騒音訴訟」(7054人)な
どの大型訴訟よりもはるかに原告数が多く、日本裁判史上初となる大規模な訴訟となりま
した。

 さすがにNHKもこの訴訟は無視できず、ラジオ第一放送の「私も一言、夕方ニュース」
で報じていましたが、今朝の新聞は全紙が報道しているようです。特に産経新聞は1面と3
面を使う最大の扱いぶりで、長文ですがここに全文を紹介します。

 産経新聞の報道で特筆すべきは、NHKの第1回「アジアの一等国」に出演したパイワ
ン族の人々がNHKに公開質問状を提出する予定や、友愛グループがNHKの福地茂雄会
長宛に抗議と訂正を求める文書を提出したことまで報道していることです。これも別途ご
紹介します。                             (編集部)


NHKを8400人集団提訴─「番組で台湾統治証言 歪曲」精神的苦痛
【6月26日 産経新聞1面】

 NHKスペシャル「シリーズ・JAPANデビュー アジアの“一等国”」に出演した
台湾人や日台友好団体などから番組内容に偏向・歪曲(わいきょく)があったと批判が相
次いでいる問題で、視聴者約8400人が25日、放送法などに反した番組を見たことで精神的
苦痛を受けたとして、NHKに計約8400万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こし
た。

 問題の番組は日本の台湾統治時代を取り上げたもので、4月5日に放送された。放送直後
から「日本の台湾統治を批判するため、証言をねじ曲げている」などの批判が相次いだ。

 原告は訴状で番組について、「取材に応じた台湾人の話を、一方的に都合良く編集して
使っている」などと指摘。具体的には(1)台湾統治下の暴動を「日台戦争」と表現(2)
「日英博覧会」でパイワン族の生活状況を実演紹介した企画を「人間動物園」と表現─な
どを挙げ、番組にはやらせや事実の歪曲・捏造(ねつぞう)があり、放送法に違反する番
組だった、などと主張している。

 原告には、約150人の台湾人も含まれている。出演した台湾人や友好団体の関係者の証
人申請や、出演者らがNHKに出した抗議文などの提出も検討している。また、東京、大
阪、名古屋では、放送に反発する地方議員や有識者ら有志が抗議デモを行った。

 NHK広報局は「訴状を受け取っていないのでコメントできない。番組の内容には問題
がなかったと考えている」としている。

■「シリーズ・JAPANデビュー」
 NHKによると、近代国家を目指し世界にデビューした日本がなぜ国際社会で孤立し敗
戦を迎えたのかを考え、未来へのヒントを探るのが企画の狙い。テーマは「アジア」「天
皇と憲法」「貿易」「軍事」の4つでうち、「アジアの“一等国”」は、その第1回。近
代日本とアジアの原点を台湾統治に探る内容としている。

責任見失う公共放送

 批判が相次いでいたNHKスペシャル「JAPANデビュー アジアの“一等国”」は
ついに法廷で争われることとなった。番組の取材方法や編集の在り方に、これほど注目が
集まったのは極めて異例だ。

 「南京大虐殺」「従軍慰安婦」「強制連行」など、これまで俎上(そじょう)にのぼっ
た近現代史の代表的論点をたどると、もともとの発端は今回の放送に使われた「日台戦争」
という言葉同様、後に一部学者や出版物から編み出された造語に始まったものが多い。

 日本のメディアが盛んにこれを取り上げ、定着した後に、計り知れない禍根をもたらす。
同盟国の米国で可決された「従軍慰安婦」をめぐる対日非難決議のように、外交の足かせ
となったり、日本の国が不当におとしめられていく。

 そうした悪循環の構図やメディアの悪意にすでに多くの国民が気づき、真剣に憂慮して
いる。公共放送の番組作りに厳しい目が向けられる理由だ。

 平成13年にもNHKは「ETV2001 問われる戦時性暴力」と題した番組を放送した。
「女性国際戦犯法廷」という名の模擬裁判を取り上げたものだが、この模擬裁判の企画趣
旨は「東京裁判では裁かれなかった旧日本軍の性奴隷制を裁く」として、日本政府や昭和
天皇に有罪判決が出される−というものだった。

 政治家の圧力と番組改変にばかり、注目が集まったが、そもそも歴史検証に名を借りた
わが国をおとしめるような番組作りだったのではないか、という疑問は今も根強くある。

 今回の訴訟は8千人を超える大規模提訴となった。批判がこれほど広がった背景には、
インターネットの発達がある。メールやメルマガなどさまざまなデータが瞬時に駆けめぐ
り、多くの国民が自らの考察や意見を自由に表明できる。

 その多くがNHKに懐疑的だったり批判的な内容でそれらは次々と広がっていく。なか
には粗暴な言葉遣いや中傷、邪推もあるが、共感できる指摘や豊かな学識に基づく適切な
考察、核心をついた推理も少なくない。

 これほど多くの視聴者が違和感を覚え、訴訟提起に至ったことは、さらに多くのサイレ
ント・マジョリティ(声なき多数者)がいることを意味する。NHKはそうしたことを肝
に銘じ、公共放送としての番組作りがいかにあるべきかをあらためて問い直す必要があろ
う。(安藤慶太)


NHK集団提訴 造語・異説 軸に構成
「日台戦争」「人間動物園」負の側面 強調
【6月26日 産経新聞3面】

 集団訴訟が提起されたNHKスペシャル「シリーズ・JAPANデビュー アジアの
“一等国”」。NHKはこれまで放送内容には問題はなく、偏向もしていないと強調して
いる。しかし、8千人を超える原告の数は今も増え続けており、第2次提訴も検討されて
いる。一体、番組のどこの部分が問題とされているのか。

 ≪日本軍に対し、台湾人の抵抗は激しさを増していきます。戦いは全土に広がり、のち
に「日台戦争」と呼ばれる規模へと拡大していきます≫

 台湾と日本の間に戦争の過去はない。出演した台湾人からも「先住民族の抵抗なら治安
の悪化だ」「戦争は言い過ぎ。NHKの誤り」などと抗議があがっている。

 NHKは「日台戦争」という言葉について、日本の大学教授らが使っていると根拠を挙
げた。しかし、「平成に入って用いられた造語。確かに『日台戦争』という言葉を一部の
大学教授が使っているが原典は戦争の定義もしておらず、治安回復のための掃討戦にすぎ
ない」(日本李登輝友の会関係者)という。

  ■ ■

 ≪イギリスやフランスは博覧会などで植民地の人々を盛んに見せ物にしていました。人
を展示する「人間動物園」と呼ばれました≫

 NHKは、1910年の日英博覧会のパイワン族の写真に、「人間動物園」の文字をかぶせ
た。フランスの学者、ブランシャール氏の共著「人間動物園」などを参考にしたという。

 しかし、当時イギリスやフランスでそうした言葉が使われていたのかどうかは明らかに
していない。また日英博覧会には、パイワン族だけでなく、日本の村やアイヌの村、力士
も参加していた。

 これを今も栄誉としている村もあり、「日本政府がパイワン族の実演を『人間動物園』
と呼んだことはない」(訴状)、「パイワン族に対する人権問題」(出演者)と訂正を求
める声が出ている。

 番組放映直後から、「日本の台湾統治の悪い面ばかりを強調している」「明らかに制作
者側の悪意が感じられる」などの声が続出。「後藤新平を弾圧差別の首謀者として描くな
ど総じて台湾統治の負の側面をことさらに強調しており、わが国を不当に貶めた番組」だ
という怒りも。

  ■ ■

 NHKは膨大な資料と関係者への取材を踏まえた番組で事実に基づき、問題はないとホ
ームページで説明している。しかし、5月26日のNHK経営委員会では、小林英明委員
(弁護士)が「日本と台湾の間に戦争がなければ、そのような内容を放送することは放送
法に違反する」「学会で多数説でなく、少数説や異説なら、そう説明するのが正しい放送
では?」と問う場面があった。

 日向英実放送総局長は「一説とは考えていない」と答え、多数説なのかは、次回へ持ち
越されることになった。経営委員会内部では個別の番組の是非を論じるのを差し控える空
気もあるようで、小林委員の意見に他委員が「そういう意見が経営とどう関係しているの
ですか」とクギを刺す一幕もあったという。