2020年までに中国が台湾侵攻する可能性  黄 文雄(文明史家)

【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」第219号:2018年1月23日号】http://www.mag2.com/m/0001617134.html

*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部で付したことをお断りします。

◆台湾の外交を根絶やしにする中国の「外交三光」

 前回のメルマガでは、2020年の台湾総統選挙に中国が介入してくる可能性について触れましたが、今回は、欧米などでも囁かれている、2020年の中国の台湾侵攻についてです。

 去年10月に、中国で5年に1度の共産党大会が開かれた際、習近平は3時間を超える大演説を行いました。そのなかで、「祖国統一」を何度も訴えたことはこれまでも述べてきました。

 ちなみに、このとき中国では、幼稚園児から老人までの多くの人々がテレビの前で習近平の演説を強制的に聞かされました。幼稚園児にとって3時間じっとしていることは拷問も同然です。そこで、以下のような笑えない冗談のような逸話があったそうです。

「幼稚園の子どもたちが家に帰って親に訴えた。『今日、先生はクラス全員に罰として午前中全員を座らせて、お話を聞かせたんだ。動いちゃいけないし、トイレにも行けない。お昼ごはんも食べられなかった。みんなどんな悪いことをしたのか、分からない』」

 それはさておき、習近平を神格化するための手段のひとつとして、2020年までの台湾統一が囁かれています。そのための布石もすでにいろいろと打っているという記事もありました。

 上記の記事によると、中国では台湾や香港などを国扱いした外資系民間企業に対し、中国政府が謝罪を強制しているということです。被害者である企業は、世界でも著名な企業ばかりです。例えば、米国系大手ホテルチェーン・マリオットインターナショナル、米デルタ空港、スペインのアパレル大手ZARAなどです。謝罪を強要された企業は、中国市場を失いたくないがために、言われるがままにこぞって謝罪しているそうです。

 また、中国は台湾と国交のある国や地域に対して、台湾との断交を条件に経済支援を申し出るなどで、台湾を国際的に孤立させようとしています。いわゆる中国の「外交三光」(台湾の外交を根絶やしにする)です。

 台湾が中南米で最重要視していたパナマも、中国の横槍により台湾との断交を決めました。日本のマスコミは、中国による相次ぐ台湾断交国家の登場を「台湾断交ドミノ」と言って報道しました。

◆台湾統一の時期は2020〜25年という衝撃的な予測

 前回も書いたように、2020年は、台湾の次期総統選挙がある年です。

 台湾政界は、今、労働基準法をめぐって揺れており、その影響で蔡英文総統の人気も下降気味です。代わりに人気急上昇しているのが、バリバリの独立派である頼清徳行政院長です。

 彼は、台湾人の間では高い人気を誇っていますが、「独立」を明言する頼氏を中国が歓迎するわけがありません。頼氏の発言をめぐって中国は、武力行使の可能性まで匂わせて警告してきています。

 しかし、国内の求心力を高めるためにも、台湾統一は習近平にとっても重要な切り札になります。そして、頼清徳の「台湾は独立国家である」発言は、台湾への武力行使を行うのに、国内への言い訳として充分使えます。台湾が民進党政権となり、蔡英文がいつまでも「九二共識」を認めず、頼清徳の「独立国家」発言もある台湾に対して、中国政府は中国が行動に出るのは当然だという空気を醸成して国民を煽っているのです。

 共産党大会後、北京市内で開かれた政府系シンポジウムでは、衝撃的な予測が発表されました。人民解放軍所属の研究者が2020年以後に予想される「中国近未来の6つの戦争」を発表し、今後、台湾、南シナ海、尖閣諸島、南チベット(インドとの国境紛争地域)、モンゴル、ロシアとの国境や領有権をめぐる戦争が起こる可能性が高いとしたうえで、台湾統一の時期は2020〜25年だと期限を明確に打ち出して予測したのです。

 欧米の研究者も、2020年は、中国が台湾への武力侵攻の準備が整う年だとして、中国の台湾侵攻を危惧しています。

◆隣国の存在を許さない「チャイナドリーム」という全体主義思想

 最近、中国は台湾海峡の中間線付近の上空を通過する航空路「M503」の運用を台湾との協議なしに一方的に運用を開始しました。台湾は対話による解決を呼び掛けていますが、中国側はそれに応じず、中国東方航空とアモイ航空は航路の使用を続けています。台湾側は、これを不服として、2月の旧正月のために予定されていた中国側の民間航空機の増便を認めず、中国に赴任している台湾人が旧正月に台湾に帰れないという事態を招いています。

 この中国の一方的な航空路への侵入も、中国による台湾包囲網の一環としてのことでしょう。台湾は中国の挑発に乗ることなく冷静に対処していくべきです。

 「天下一国主義」と「人類は皆兄弟」というのは、大昔からのチャイナドリームであり、チャイナドリームの原点です。つまり、「すべてを一つにする」のが「中華思想」です。西洋人は、この「中華思想」を「中華精神」または「cinocenthism」と呼び、自己中心、自国中心と捉えています。

 それは、「唯我独尊」、仏教用語では「我執」という言葉であり、絶対的自信を意味します。現代語では「全体主義」です。左のコミュニズムも右のファシズムも、昔ながらの中華全体主義に当てはめれば、あくまでも全体主義でしかありません。

 「天下一国主義」という思想について、マックスウェーバーは「家産性国家」と呼び、思想史、精神史からも隣国の存在を許さない思想だと捉えていました。それが、チベット、ウイグル、南モンゴルなどの存在を許さないチャイナドリームです。

 日本や台湾も例外ではなく、隣国として存在することを許さない中華思想は確かにあります。しかし、この「天下一国主義」の弱点は、中国のみの歴史、社会における法則とシステムであることです。

◆そろそろ毛沢東と同じタイプの指導者が出て来る頃

 習近平が、毛沢東やスターリン主義への回帰をチャイナドリームとしていますが、それは習近平だけの夢ではなく多くの中国人にとっての夢でもあります。毛沢東がいなくなってすでに半世紀が過ぎますが、中国の俗語に、「偉人は500年に一人出て来る」というのがあります。これは古代のことわざであり、時代は加速度的に速くなっています。

 私も、そろそろ毛沢東と同じタイプの指導者が出て来る頃かなと思っています。それが習近平なのか、あるいは次の指導者なのかはわかりませんが、習近平が失敗したとしても、次にも中華至上主義を声高に叫ぶ人物が必ず登場します。

 胡耀邦、趙紫陽、胡錦濤などの、融和的な人物は中国では稀有なタイプです。多いのは、やはり習近平のようなタイプです。江沢民のような金の亡者タイプは上海幇に多くいます。独裁姿勢を強める習近平の登場は、中国という国の歴史の必然なのかもしれません。

 ただし、国内の独裁体制はうまくいったとしても、対外的には衝突の原因になります。そのため、中国と他国との摩擦はますます高まっていくはずです。台湾もその一つであり、その先には日本との衝突が控えています。

 いずれにせよ、今後の中国と台湾の情勢は、非常に緊迫したものになると思われます。


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