許世楷代表が「日台間でも歴史の共同研究を行うべき」と提唱

50年間の歴史を共有し、民主・自由・人権などの価値観を共有する台湾

 日本と中国の「歴史共同研究」の初会合が26、27日に北京の社会科学院で開かれた。こ
れは、10月の安倍総理の訪中で、客観的認識を深め、相互理解を増進させることを目的と
している。
 だが、会合初日の26日、中国外務省の秦剛・副報道局長が記者会見で、南京事件につい
て「証拠は確かで動かすことはできない。国際社会はすでに結論を出している」と述べ、
中国側の公式見解を変更する考えがないことを強調し、客観的認識を深めようとする意欲
も意図もないことを表明したことからも明らかなように、端から「結論ありき」で中国側
は臨んでいる。中国はこの共同研究の場を利用して、公式見解の国際的定着を狙っている
と言ってよい。
 これに対して、台湾の許世楷・台北駐日経済文化代表処代表は「「もし共同研究が台湾
に触れれば、我々は絶対に承認しない。台湾の歴史を他国が決める必要はない」と表明し
、「日台間でも歴史の共同研究を行うべきだ」と提唱している。
 まさしくその通りである。12月22日付の本誌で「台湾化が進む台湾の歴史教科書」を取
り上げた際にもまったく同じ提案をしているが、蒋介石の中国国民党による一党独裁体制
を克服した台湾だからこそ、教科書も台湾化されるのであり、50年間の歴史を共有し、民
主・自由・人権などの価値観を共有する台湾だからこそ、日本との歴史の共同研究が成り
立つのである。
 日本は台湾とこそ共同研究を進めるべきなのである。ここに改めて提案したい。
                     (メルマガ「日台共栄」編集長 柚原正敬)


日中歴史共同研究:中国歴史観反映、台湾から警戒感
【12月28日 毎日新聞】

 【台北・庄司哲也】北京で26、27の両日に開かれた「日中歴史共同研究」について、台
湾は中国の歴史観が強く反映されることを警戒している。中台間の歴史認識には隔たりが
あり、台湾では独自に歴史を評価しようとする動きが進んでいる。今回の共同研究が、中
台間に新たな摩擦を引き起こす可能性もある。

 台湾の中央通信は26日、対日交流の窓口である台北駐日経済文化代表処の許世楷代表が
「もし共同研究が台湾に触れれば、我々は絶対に承認しない。台湾の歴史を他国が決める
必要はない。日台間でも歴史の共同研究を行うべきだ」との認識を示したと報じた。中国
ペースで歴史観が形成されることをけん制したとみられる。

 50年間に及ぶ日本の台湾統治について台湾には、日清戦争での日本の勝利で清国から割
譲されたとの見方がある一方で、当時は、台湾に清朝の統治は及んでいなかったとの意見
もある。今回の日中共同研究で「台湾は中国の一部」との中国の主張に沿った歴史認識が
導き出されることを台湾は警戒している。


日中歴史共同研究の初会合 歩み寄りは困難 北京
【12月28日 産経新聞】

 【北京=野口東秀】日中両国の有識者が出席、北京市の社会科学院で行われていた日中
歴史共同研究の初会合は27日、2日間の日程を終え、2008年6月に研究成果発表を行うこ
となどで合意、閉会した。共同研究では日中戦争を含む近現代史をめぐる歴史認識が焦点
。中国側は「事実は1つ、解釈も1つ」という中国共産党の歴史観を固持するとみられ、
日中双方が歴史認識の共有で歩み寄るのは難しい情勢だ。
 27日の会合後に記者会見した日本側座長の北岡伸一東大教授によると、大きく「古代・
中近世史」「近現代」に分けたうえで、近現代については昭和初期までと、満州事変から
終戦、戦後の3つに分けて研究を進めることで合意した。メンバー以外の有識者の参加も
認める。
 北岡教授は「歴史問題が日中協力関係を妨げるべきではなく、歴史認識の溝を縮小すべ
きだとの合意があり、努力しようとの雰囲気だった」と述べた。次回会合は来年3月18日
〜21日の間に3日間、12月に第3回会合、2008年6月に最終会合を開き、研究成果を発表
する段取り。
 26日の会合の冒頭、北岡教授は、昨春の反日デモで日中間の溝が深まった点を指摘した
上で、胡錦濤国家主席が昨年、抗日戦争での国民党の役割を評価するなど、中国側の歴史
認識に対する「多元化」の兆しに期待感を示した。
 一方、中国側座長の歩平・社会科学院近代史研究所長は、歴史解釈の対立を克服したい
との熱意を示しつつ「侵略戦争の歴史事実を否定する無責任な言動が両国の共同利益を損
なっており、これが歴史問題を解決できない根本原因だ」と強調。共同研究では「こうし
た言動にまず警戒する必要がある」と発言した。
 こうした中国側の姿勢について、記者会見で北岡教授は「(中国側は)未来志向だった
と理解する」と語った。
 中国側は近現代史にウエートを置いており、今後は「靖国神社」や「戦争責任」などを
めぐって対立することが予想される。とくに中国の学者は一党独裁体制の正当性を歴史に
求める党の見解から離れて自由な学術的な見解を述べることはまずあり得ない。中国側出
席者も会見で「共同研究は政治関係と国民感情の要素と切り離せない」としており、純粋
な歴史研究ではないとの立場を明らかにしている。
 メンバーではないが、上海師範大学歴史学部の蘇智良教授は中国メディアに対し、「最
大の対立点は南京大虐殺だ。日本では被害者数を10万、20万人とし、一部は完全否定する
。これを受け入れることはできない」と指摘した。



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