朱上洪下―国民党総統選候補差し替えのドタバタ劇  迫田 勝敏(ジャーナリスト)

国民党が総統選の公認候補を立法院副院長(国会副議長)の洪秀柱から党主席、朱立倫に差し替
えた。予想されたことだが、党内民主選挙で決めた候補を本人の意思に反して降ろすのは民主社会
では有り得ない。党のイメージを失墜した交代劇の舞台裏を探ると、そこには理念も理想もなく、
ひたすらに自分の利益だけを追う群像が見えてくる。

◆「抛磚引玉」―煉瓦が玉になった

 7月の党大会が満場一致で公認した洪秀柱は、5月、総統選候補を決める党内予備選に出馬した
時、「抛磚引玉」と話した。磚(煉瓦=洪)を抛(なげう)って玉(有力候補)を引き出すための
立候補というわけで、自分自身が公認候補になるとも、なれるとも思っていなかった。

 ところが、副総統の呉敦義も立法院院長の王金平も出馬を見送り、党主席である朱も「出るべき
責任がある」という総統、馬英九の説得も拒否して出なかった。昨年11月の統一地方選挙での惨敗
で、誰もが総統選に勝ち目はないとみていたからだ。有力候補がいないまま予備選が始まり、洪が
残った。もちろんB級候補を公認するのに反対は多く、学歴詐称や乳癌情報など洪降ろしの中傷も
あった。

 しかし正式に選出されただけに党大会は公認するしかなく、煉瓦は玉になった。そこで洪は少し
天狗になった。「終極統一」など急進統一派の本音を公言。台湾の将来にとって一番大事な米国訪
問を促す声も無視。米国軽視は、中国との統一志向を宣言したようなものだ。主席の朱が公認辞退
を説得したが、拒否。結局、洪を力ずくで降ろすしかなかった。

◆「披掛上陣」―いざ出陣、逃げ道を用意して

 洪降ろしには米国の圧力もあっただろうが、最大の理由は立法委員選挙だ。洪支持者は連日、
「洪降ろし反対活動」を続けたが、終盤は「白狼」こと張安楽も洪支援に出てきた。元竹連幇(黒
社会)幹部で中国との統一主張の中華統一促進党主席。急進どころか即時統一派だ。中国との関係
は「現状維持」が大半の台湾人の考え。それなのに即時統一派が国民党の総統候補支持では有権者
の国民党離れは加速する。

 立法院の現状は、国民党が過半数の57議席を大きく上回る65議席だが、党勢衰退で来年の同日選
挙では過半数どころか、50議席確保も難しい。議席確保に懸命の候補の中には国民党を離党し、無
所属や親民党から立候補する人も出てきた。国民党解体の危機。事、ここに至ってバラバラだった
幹部たちも足並みを揃えて洪降ろしに踏み切った。

 一部に王金平推挙の動きもあったが、ここはやはり党主席の責任ということで、朱立倫が「披掛
上陣」、鎧兜に身を固めての出陣となった。朱は何度も総統選不出馬を断言していたのに、武士に
二言だ。それに新北市長職を辞めず、休暇をとって総統選に参選は初のケース。休職期間中の報酬
を寄付すればいいというものでもない。負けて逃げ帰る道、つまり市長職を確保しての参選では、
本気度が疑われるのは当然だ。朱にすれば、元来、負け戦だし、立法委員選挙支援の出馬だからと
いうのだろうが…。

◆「跛●鴨」─馬総統はまだレイムダックでない

 ポスト馬の国民党の後継者は副総統の呉、新北市長の朱、そして立法院長の王の名が浮かぶ。カ
ギは総統の馬。外省人の馬は台湾人の王とは合わない。一昨年、馬は王を立法院長の椅子を取り上
げるべく、党紀違反をでっち上げ除名処分にした。比例代表の立法委員である王は党籍剥奪なら、
立法委員の資格喪失。立法委員でなければ立法院長になれない。

 馬王政争と呼ばれ、裁判になり、党主席として告訴した馬は敗訴。今年春が上告の期限だった
が、原告の党主席は朱に替わり、朱は上告せず、王の勝訴が確定。この時点でそれまでは近いとみ
られていた馬と朱の間に亀裂。馬の残る王苛めは、立法委員選挙。王はすでに比例代表2期で、党
の内規で3期は不可。今回は選挙区で戦うしかない。台北市長選の予備選でしたように馬は対抗馬
を擁立して追い落としを図るかもしれない。だが、朱は内規改定し、3期OKとする動き。どうや
ら朱王連合で、馬の介入阻止の構えだ。

 もっとも総統の権限は大きい。副総統の呉敦義は馬べったりで副総統になった。いわば馬の手
駒。だが、朱は呉を次の党主席にして懐柔の可能性もある。朱、王、呉。三者三様の動きで次ぎで
はなく、次の次ぎ2020年の総統選を目指す動き。その脳裏には国家も国民もない。その中でやはり
カギは馬。世界一の金持ち政党といわれる国民党の党資産は馬が握り、総統退任後の影響力維持の
ために使い方を決めるだろう。馬はまだ跛●鴨(レイムダック)にはなってない。(敬称略)

●=脚の正漢字で、去が谷

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