日台の特別な絆を大切に 山本 勲(産経新聞前台北支局長)

【産経新聞:平成23年(2011年)6月2日「東亜春秋」】

 社命により5月末日、台北支局長職を離れた。わずか2年3カ月の台湾駐在だったが、万感
の思いがこみ上げてくる。かつて別の新聞社の支局長として北京、香港に駐在したことが
あるが、やはり台湾は格別だ。人々の人情の厚さ、飛び抜けた親日度はもちろん、言葉の
壁をこえて深いところで通い合う、なにか共通の心情を感じるのだ。こうした「日台の特
別な絆」をさらに太くすることで、ともに21世紀の厳しい時代を乗り切っていくよう願っ
てやまない。

 東日本大震災における台湾官民各界の被災者への深い哀悼と同情、熱い支援には多言を
要すまい。政府・民間義援金(台湾外交部調べ)は5月末に60億台湾元(170億円)を超え
た。日本側の各国統計はないそうだが、世界最大は動かないだろう。

 当支局も見舞い、哀悼や支援方法を問い合わせる電話の応対に追われた。その中で「ニ
ュースをみながら毎日泣いています」との言葉をどれだけ耳にしたことか。台湾の人々が
未曽有の大災害を、まるでわがことのように受け止めてくれているのがひしひしと伝わっ
てくるのだ。

 日本の台湾との交流窓口機関である交流協会が昨春発表した調査では、台湾人の52%が
日本を「最も好きな国」に選んでいた。協会幹部も戸惑うほどの高さだったが、その通り
の結果が出た形だ。

 5月中旬には、王金平・立法院長(国会議長)が台湾の立法委員(国会議員)十数人を含
む約300人の観光訪問団を伴い、北海道を訪問。風評被害にあえぐ日本の観光産業支援にひ
と役買った。

 「まさかの時の友こそ真の友」である。日本からもこのところ国会議員の訪台が相次い
でいる。5月8日に南部、台南市で開催された八田與一氏記念公園の完成式典には、森喜朗
元首相ら約30人が参加した。

 1〜4月の日本からの観光客は約28万人と前年同期比22%増えた。震災後の4月も15%増だ。
日台関係に好循環が起きている。

 日台関係は2008年5月の馬英九政権発足直後の台湾遊漁船と日本巡視船の衝突事件で一時、
険悪化した。一方、馬政権が三通(中国との直接の通商、通航、通信)を解禁したことで
台湾での中国の存在が急激に大きくなった。

 中台自由貿易協定に相当する経済協力枠組み協定(ECFA)の締結(昨年6月)を機に、
中台経済の一体化が加速しようとしている。中国はさらにこの数年内に文化協定、政治協
定の締結を通じて台湾統一(併合)への、戻れない道を固めようとの動きをみせている。

 これには与野党をこえて警戒論が強まり、馬総統も「(来年1月の総統選で再選されても)
任期中に大陸(中国)と統一問題を話し合うことはない」と繰り返し言明している。

 行政院(政府)の世論調査(昨年末)でも、中国との統一を望む層は1割以下だ。事実上
の独立状態にある「現状維持」支持が6割強で、明確な「独立」が2割強を占める。

 それでも強大化する中国と台湾の勢力格差は開く一方で、台湾が自分の意思と力だけで
望む将来を切り開くことは次第に難しくなりつつある。歴史的、心情的にきわめて近い日
本が、米国や欧州連合(EU)などと連携して台湾の国際社会参加を促進するときだ。それ
が台湾の人々への最大の恩返しとなるはずだ。



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