廣枝音右衛門の御墓・顕彰碑参拝  室 和代(日本李登輝友の会茨城県支部担当)

天候にも恵まれ、桜もちらほら咲き始めた4月1日。日本李登輝友の会茨城県支部(佐藤
元支部長)主催による、廣枝音右衛門(ひろえだ・おとえもん)の御墓と顕彰碑参拝が行
われました。廣枝氏のご子息夫妻からお話を伺えるということで、茨城県支部会員10名
(茨城県支部顧問の黄文雄先生も参加)と他支部や一般の方(お子さんも)も含めて23名
集まりました。

 廣枝音右衛門とは、海軍巡査隊の大隊長として、大東亜戦争末期に部下であった台湾人
日本兵2千名の命を自らの死をもって救った人物です。

 1976(昭和51)年9月26日に台湾の獅頭山勧化堂(仏教寺院)に廣枝氏をお祀りして供養
する式典が行われました。それから毎年欠かさず慰霊祭が行われています。

 この慰霊顕彰の動きが日本にもすぐに伝播し、翌年(昭和52年)11月、ふみ未亡人の住
む茨城県取手市にある弘経寺(ぐぎょうじ)の墓域に、元台湾新竹州警友会の奉賛により
「遺徳顕彰碑」が建立されました。

 弘経寺は取手駅から徒歩10分ほどのところにある浄土宗の古刹で、境内には桜の大木な
どもある堂々たるお寺です。

 お寺の前で参加者が集合し、初めに茨城県支部事務局長の薄井保則氏より今回の参拝の
意義などについて説明がありました。

 廣枝音右衛門は明治38(1905)年、神奈川県足柄郡片浦村(現・小田原市)に生まれ、
昭和5年に台湾に渡り警察官になります。新竹州竹南郡政主任勤務の時、大東亜戦争の戦線
拡大により台湾で結成された総勢2千名にも及ぶ海軍巡査隊の総指揮官に海軍巡査として任
命されました。

 昭和18(1948)年12月に廣枝隊長の海軍巡査隊は、フィリピンのマニラに渡ります。戦
局が厳しくなった20年2月、軍上層部から米軍に対する総攻撃の命令を受けます。棒地雷と
円錐弾が配られ、全員玉砕の命令に、廣枝隊長は苦悩します。

 日頃より温厚な人柄ながら、並々ならぬ慈愛と勇気と責任感をもち、台湾人から慕われ
ていた廣枝隊長は決意しました。

 ≪諸君には故国台湾で生還を待つ人がいる。ここで玉砕するのは犬死に等しい。責任は
私がとるから生き延びてほしい≫と。そして2月23日午後3時ごろ、自ら拳銃2発で頭を撃ち
自決しました。享年40。

 本日はその慰霊と顕彰のため参拝します、との説明でした。

 次に、台湾の獅頭山勧化堂に参拝したことがある会員の片木裕一氏からこの墓参に至る
までの説明がありました。

 廣枝隊長の部下で、今も健在の劉維添氏(90歳)が台湾で慰霊祭を行っていること。当
会会員の渡邊崇之氏が劉氏に出会い、廣枝隊長の詳しい話を直接伺って感銘を受けたこ
と。それを片木氏が渡辺氏から聞き、ご遺族と連絡をとり、今日の行事につながった、と
いうことでした。

 続いて廣枝氏のご子息からお話を伺いました。

 本日多くの参加者が集まってくれたことへの感謝、父と別れた時はまだ9歳であったの
で、父の果たした意味がよく分からなかったということなど、体調があまり優れない中、
側に奥様を伴われてお話下さいました。

 その後、参加者一行はご子息夫妻とともに御墓と顕彰碑のある場所へと向かいました。
日当たりのよい墓地の、南方に面した所に廣枝家の御墓があり、その横に顕彰碑が建って
います。「台湾の方に向いていますね」と薄井氏が言いました。顕彰碑の脇には燈籠があ
ったのですが、昨年の地震で倒れて壊れてしまったそうです。

 すでに茨城県支部の方によって御墓は清められ、花が供えられていました。黒い大きな
石碑には「ああ壮烈義人 廣枝音右衛門」と刻まれ、経歴、フィリピンに派遣されてから
のことが詳細に刻まれています。

「部下への愛情深く慈父と仰がる」「君達は父母兄弟の待つ地台湾へ生還しその再建に努
めよ 責任は此の隊長が執る」

「この義挙に因り生還するを得た……部下達は吾等の今日あるは彼の時隊長の殺身成仁の
義挙にありたればこそと 斉しく称賛し此の大恩は子々孫々に至るも忘却する事無く報恩
感謝の誠を捧げて慰霊せんと昭和五十一年九月二十六日隊長縁の地霊峰獅頭山権化堂にて
その御霊を祀り 盛大なる英魂安置式を行う この事を知り得て吾等日本在住の警友痛く
感動し相謀りて故人の偉大なる義挙を永遠に語り伝えてその遺徳を顕彰せんとしてこの碑
を建立す 昭和五十二年十一月吉日 元台湾新竹州警友会 因みに遺族は取手市青柳に住
す」

 参加者は御墓に一人ひとり焼香し、頭を垂れました。

 それからしばらく歓談して、顕彰碑の前でご子息夫妻を囲んで記念撮影をしました。薄
井氏が碑文を読み上げ、黄文雄先生の解説を伺い感慨に浸ったあと、一行は碑を後にしま
した。

 その後、取手駅近くで宴席を設け、一人ひとりが台湾との出会いや繋がりを述べて親交
を深めました。「日台の絆」ともいうべき廣枝音右衛門のような人物を通じ、今後も台湾
との連帯を強めようとの思いを新たにした一日でした。


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