国家人権博物館組織法を制定した台湾の次の取り組みは中正紀念堂の解体的転換

台湾は現在、蒋介石・蒋経国の白色テロ時代を含む一党独裁時代を「権威主義時代」とし、その見直しを進めている。

 11月28日に立法院で可決した「国家人権博物館組織法」では、権威主義時代について、1945年8月15日から、総統だった李登輝氏が1991年4月30日に「動員戡乱時期臨時条款」を廃止し、さらに金門・馬祖地区の戒厳令を解除した1992年11月7日までの47年間を指すと定義し、また、大規模な人権侵害事件が発生した場所を、権威主義時代の象徴として「不義遺跡」と命名し、45ヵ所を指定しているという。

 この「国家人権博物館組織法」によって定められている行政院文化部直属の国家人権博物館は近々オープンするというが、すでに6年前の2012年10月19日に「国家人権博物館設立準備処」が創設されていて、「景美人権文化園区」と「緑島人権文化園区」の2つのテーマパークを管轄・運営している。

 景美人権文化園区も緑島人権文化園区も、本会の「日本李登輝学校台湾研修団」(略称:李登輝学校研修団)や「役員・支部長訪台団」などで訪れている。

 台湾警備総司令部軍法処看守所だったところが景美人権文化園区で、新北市新店区にある。戒厳令下、政治受難者を拘置していたところで、美麗島事件で捕まった呂秀蓮・元副総統や姚嘉文・元考試院長、陳菊・高雄市長などもここに収監され、刑を執行されている。

 唯一、日本人で収監されたのが小林正成(こばやし・まさなり)氏だった。台湾独立建国聯盟日本本部の秘密盟員だった小林氏は1971年5月、台北市内のビルから台湾の民主化と独立を求めるビラを気球からばら撒いたことで逮捕されるも、数ヵ月で日本へ送還されたため命を長らえたが、今も景美人権文化園区には小林氏の写真とともにこの事件のことが展示されている。

 一方の緑島人権文化園区は白色テロ時代(1949年〜1992年)に政治受難者を収監し刑を執行した刑務所で、太平洋の孤島「緑島」にあり、故蔡焜燦先生の実弟の蔡焜霖先生など実に多くの台湾人が無実の罪で収監されたところだ。

 国家人権博物館組織法を制定されたことについて、鄭麗君・文化部部長(大臣に相当)は「国家人権博物館の開設は、『移行期の正義』を実現するための一部分にすぎず……一方で国家人権博物館の開設を推進しながら、もう一方で国家が法律によって過去の権威主義的な統治者をしのぶことを定めるというのは、人格の分裂と同じだ」として、次は中正紀念堂組織法の改正を進めると宣言した。中正紀念堂の解体的転換は当然のことだろう。台湾国際放送が詳しく伝えているので下記に紹介したい。

 中正紀念堂は周知のように独裁者だった蒋介石を顕彰する施設で、台北市内のど真ん中にある。民進党の陳水扁政権時代の2007年に「台湾民主紀念館」に改名されたものの、国民党の馬英九政権は元の中正紀念堂に戻している。

 台湾で戒厳令が解除されてから30年、2・28事件から70年という節目の本年、台湾は台湾を取り戻すために大きな一歩を記した。

 日本ではいまだに「蒋介石の以徳報恩」神話を信じている向きがある。蒋介石の以徳報恩とは「天皇制を護持してくれた」「対日賠償請求権を放棄してくれた」「支那派遣軍と在留日本人を無事に送還してくれた」「ソ連による日本の分割占領を阻止した」などを指すが、すべてウソである。だから「神話」なのだ。

 昭和大学教授や総統府国策顧問をつとめられた故黄昭堂・台湾独立建国聯盟主席がこのウソを解明されている。それが、2002年7月8日に発表された「日本人を感激させた蒋介石発言『以徳報怨』の背景」だ。すでに本誌2006年3月5日号で紹介しているが、改めて別掲でご紹介したい。

 また、黄昭堂氏とともに「台湾青年」編集長として台湾独立運動を進め、台湾大学教授だった彭明敏氏の台湾脱出を成功させた宗像隆幸氏(現在、台湾独立建国聯盟日本本部顧問)も、2002年9月21日に発表した「蒋介石神話の創造─ 蒋介石の聖人伝説ほど矛盾に満ちた話はない」で、神話が生み出された背景について論述されている。

 この論考も本誌2006年3月1日号で紹介しているが、「蒋介石の以徳報恩」がウソであり神話にすぎないことを知っていただくため、改めて別掲でご紹介したい。

—————————————————————————————–国家人権館が開幕、次は中正紀念堂の転換【台湾国際放送:2017年11月29日】

 6年余りにわたって開設準備が進めれられて来た国家人権博物館が、近くオープンする予定だ。

 立法院は28日、人権による治国の理念を明確に打ち出すことを目的に、「国家人権博物館組織法」を可決した。これについて、文化部の鄭麗君・部長は29日、「政府として国家の立場から、過去の権威主義統治の時代に行われたた人権迫害を直視し、真相の復元に協力すると共に、この国家人権博物館を、人権教育の拠点にしたい」と語った。

 鄭・部長は、「国家人権博物館の開設は、『移行期の正義』を実現するための一部分にすぎず、『移行期の正義』の全面的な実現には歴史の真相の復元、名誉回復と賠償、権威の象徴だったものの処分などが含まれる。このため、立法院がいち早く『移行期の正義促進条例』を可決・成立させ、国家が『移行期の正義』を進める上での法律的な基礎を確立してほしい。この基礎に基づいて、文化部は中正紀念堂組織法の改正を進める。しかし、中正紀念堂の転換には、社会に異なった意見を持つ人たちがいる。まず、社会で討論してもらい、コンセンサスを集めた上で、法改正を進める」と表明し、蒋介石・元総統を記念するために建てられた中正紀念堂の位置づけの転換に対して、意欲を示した。

 鄭・部長は、「国家人権博物館組織法の立法化と共に、同じ基準よって、今年が戒厳令解除から30年になるのに当たって、法律と組織の角度から、権威主義統治者を見直す必要があると思う。このため、我々は今年、中正紀念堂の転換を始動させる。まのた、こうした転換の仕事について、社会での討論を求め、コンセンサスを集めた上で、法律改正のための草案を作成し、国会の審議を求めたい」と語った。

 鄭・部長は、「一方で国家人権博物館の開設を推進しながら、もう一方で国家が法律によって過去の権威主義的な統治者をしのぶことを定めるというのは、人格の分裂と同じだ、このため、中正紀念堂の転換は必要だ」と指摘した。


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