台湾歌壇と呉建堂  蔡 焜燦(台湾歌壇代表)

下記に紹介するのは、「台湾歌壇」の蔡焜燦代表が昨夏、ある本に寄稿されるつもりで
書き綴られた台湾歌壇に関する一文だ。結局、その本には別の原稿を提出されたので陽の
目を見なくなった。しかし、三宅教子さんの歌集『光を恋ひて』を紹介したので、「台湾
歌壇」のことをその設立経緯から知っていただくには最適と思い、ここにご紹介する次第
だ。

 タイトルの「台湾歌壇と呉建堂」は、編集部が付したものであることをお断りする。


日本語のすでに滅びし国に住み短歌(うた)詠み継げる人や幾人
                           孤蓬万里(『台湾万葉集』)

 この和歌の作者の氏名を見ずに和歌だけを読んだ読者は、ほとんどが「ああ、この歌は
外国の人が外国で詠んだ歌だなあ」と思ふに違ひない。

 今、日本以外で三十一文字の和歌を日本語で詠む国はいくつあるだらうか。ブラジル、
台湾、韓国……。ポーランドでは大学の日本語学部で詠んでゐるさうで、フランスには日
本の先生方によるフランス語訳の名作があり、アフリカの人々の心を打つやうな作品を、
台湾の歌人達も感動して拝読したことがある。

 さう、冒頭の歌は台湾の「台湾歌壇」の創始者、孤蓬万里こと呉建堂氏の詠まれた歌
だ。

 呉氏は戦前、台北の旧制台北高等学校理乙に在学中、『万葉集』に魅せられて医学と文
学の二足わらじ(呉氏自称)を履いて半世紀を過ごされた方である。呉氏の経歴を簡単に
述べると、1926年(大正15年)台北生れ、台北帝大医学部卒、熊本大学医学部博士、剣道8
段、第3回世界剣道選手権個人3位(1976年)、『台湾万葉集』で菊池寛賞受賞(1996
年)、宮中歌会始御陪聴に招かれる(1996年)等であるが、1998年に帰幽された。

 呉氏は終戦後もずつと和歌の勉強をしてゐた。そして、数人の同好の人々とひそかに和
歌の勉強会をやつてゐた。当時、おおつぴらに、殊に日本語の勉強会等はとても出来ない
時代になつてゐた。時が経つにつれだんだん緩やかになり、漸く和歌が作られるやうにな
つて初めて「台北歌壇」を同好の士11人で立ち上げた(「台湾」と云ふ名称は未だタブー
であった)。1967年のことである。

 大正二桁、昭和一桁生れの台湾人は、生れながらの日本人で、国語で物を書き、国語で
思索し、果ては寝言までが国語だつた、所謂「日本語族」である。その人々が日本の短詩
型文化にとりつかれて会を作り、和歌を楽しむことは常態である。また歴史的仮名遣ひを
用ひ、日本語の文語で和歌を詠むといふことは極く自然なことであらう。

 終戦から66年、「台湾歌壇」の前身「台北歌壇」が成立してから44年、1968年に台北歌
壇歌誌第1集発行から通算152集、この44年来の投詠者は500人にのぼる。

 現在、会員は100人弱であるが、若い会員の吸収に努力してをり、平均年齢もだんだん若
くなつてゐる。この歌人達が万葉の調を大事にして詠作を続けてゐるのは、呉氏の「万葉
の流れこの地に留めむと生命(いのち)のかぎり短歌(うた)詠みゆかむ」の遺詠の影響
大なることは否めない。

 呉氏の1996年の宮中歌会始に招かれた時に作られた歌2首書き添へて筆を擱く。

  宮中の歌会始に招かれて日本皇室の重さを思ふ

  国思ひ背の君思ふ皇后の御歌に深く心打たるる

 尚、本年3月11日の東日本大震災に際して台湾の人々が非常に関心を持ち、救援物資、義
捐金等を送つて嘗ての日本の同胞から感謝されてゐることもさることながら、66年来、す
でに異国になつてゐる台湾の人々の大震災に際して詠んだ和歌も、日本の人々の感動を誘
つてゐる事実を書き留めておきたい。

  国難の地震と津波に襲はるる祖国護れと若人励ます  蔡 焜燦


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