台湾人への報復逮捕から見る中国の「日本人スパイ逮捕」  黄 文雄(文明史家)

【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」第201号 :2017年9月20日号】http://www.mag2.com/m/0001617134.html

*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部で付したことをお断りします。

◆柳条湖事件が起きた9月18日に日本人をスパイ容疑で逮捕

 中国遼寧省の日刊紙「大連日報」は9月18日、大連市国家安全局がスパイ活動に従事した疑いで取り調べていた日本人1人について、正式に逮捕されると報じました。

 この日本人は、今年5月に大連市で拘束された60代の男性とも見られていますが、中国では9月18日は柳条湖事件が起きた「国恥記念日」とされており、見せしめのために、わざわざこの日に日本人逮捕を発表したとも言われています。

 柳条湖事件が起きたのは現在の瀋陽で遼寧省の省都ですが、大連はそれに次ぐ遼寧省第2の都市です。遼寧省のトップである党委書記は李希という人物で、習近平の本籍である陝西省の省委常務委員を務めたこともあることから、習近平に近い「陝西幇」とされています。

 また、遼寧省の省長は宇宙開発に関わってきた陳求発で、こちらも習近平が次期共産党大会で多くの昇格を狙っているとされる「宇宙閥」の一人です。

 要するに、遼寧省のトップは2人とも習近平の息のかかった人物であり、日本人逮捕は習近平の意向によるものである可能性が高いのでしょう。とくに2014年に反スパイ法が制定されてから、スパイ容疑として拘束された日本人は12人にのぼり、そのうち8人がまだ中国国内で拘束中とされています。

◆きわめて政治色が強い中国での逮捕・起訴

 中国のこうした政治的な圧力というのは、日本に限ったことではありません。台湾でも、今年の3月19日、前民進党の職員で、人権団体のNPO職員である李明哲氏が中国で、「煽動転覆国家政権罪」で逮捕されました。

 しかしこれに先立ち、台湾では中国人留学生の周泓旭が、台湾外交部の職員から機密情報を引き出そうとした嫌疑(共謀罪)で今年3月9日に逮捕され、9月15日に台北地方裁判所から1年2カ月の有罪判決を受けており、李明哲氏の逮捕はこれに対する報復だと見られています。

 台湾ではこの李明哲の釈放要求運動が社会的に広がっており、台湾各所で抗議デモが行われています。

 中国での逮捕・起訴が、きわめて政治色が強いことは言うまでもありませんが、その傾向はますます露骨になってきています。

 一説には、日本に潜伏する中国のスパイは5万人もいると目されています。過去に起きたスパイ事件としては、「李春光事件」が有名です。これは2012年、在日中国大使館の一等書記官である李春光が、虚偽の身分で外国人登録証や銀行口座を取得し、ウィーン条約で禁止されている商業活動やスパイ活動を行ったことが発覚した事件です。

 李春光は人民解放軍の諜報部に在籍した過去があり、しかも、松下政経塾に入り込むことにも成功し、当時の民主党・野田政権の農水大臣、農水副大臣に接近し、農水関係の機密文書が漏洩したともいわれています。

 ところが、日本にはスパイを取り締まる法律がないので、外国人登録法違反と公正証書原本不実記載でしか書類送検できませんでした。しかも、警察側の出頭要請に対して中国大使館側は拒否、結局、李春光はそのまま中国に帰国してしまいました。

 近年の中国での相次ぐ日本人のスパイ容疑による拘束・逮捕も、台湾の例を見れば、李春光事件の報復措置ともいえるかもしれません。

◆2010年の「国防動員法」で在外中国人の誰もが工作員に

 中国が日本人をスパイとして次々と摘発していくなか、日本では中国人スパイを摘発できないというのが現状なのです。もちろん台湾でも中国人スパイは暗躍していますが、二重、三重スパイも横行している状態です。

 また、中国では2010年に「国防動員法」を成立させ、有事の際には中国に進出した外国企業の施設や技術を接収できるうえ、海外にいる中国人を工作員・民兵として協力させる命令を下せるようにしました。

 そして、在日中国大使館では、日本にいる中国人に連絡先の登録を呼びかけていますが、これも国防動員法の発令に備えてのことでしょう。日中間で有事が起こった際、中国政府の号令一下、70万人いる在日中国人が日本に対する撹乱分子や工作員となる可能性があるということです。

◆日本は敵国であるという姿勢を明確に見せ始めた中国

 中国で拘束・逮捕された日本人がどのような活動をしていたかはわかりません。習近平と敵対する江沢民派や胡錦濤派と深いつながりがあり、それが原因で拘束された可能性もあります。

 はっきり言えることは、日本人だからといって、あるいは「日中友好人士」だからといって、決して安心できなくなったということです。つまり日本は敵国であるという姿勢を明確に見せ始めているということなのです。

 中国のスパイの国としての歴史は長く、『孫子』の兵法にも「用間の術」として特筆しています。「用間」とはスパイ工作のことです。ことに明の時代には皇帝の「錦衣衛」(秘密警察)をはじめ、宮廷内には宦官による東廠、そしてそれに対抗する西廠というスパイ機構がつくられました。人間不信の国ですから、スパイといえども信用されていないため、さらにスパイを監視する内行省をつくったのです。

 宮廷以外にも、全国の隅々にわたるまでスパイが目を光らせていましたが、それでも明は内乱で滅びました。

 明のスパイ組織を清も真似て、「血滴子」という武器でもっぱら暗殺を専門とする組織ができました。20世紀に入ってからは、国民党も共産党もスパイ機構を複数つくり、相互に牽制、監視を行っていました。

 そのスパイ対象は民間にも広がり、中国大陸では街頭委員会、台湾では蒋親子時代の「民衆服務所」などによって、民衆の一挙手一投足までをも監視するようになりました。しかも密告を奨励し、密告しない者は対象者と同罪とされましたので、学校から企業に至るまで、スパイだらけの国になったのです。劉少奇も林彪も、毛沢東に密告したのは自分の子供でした。

 もちろんスパイだらけの中国にもそれなりの弱みがあります。中国のスパイは金に弱いので、アメリカの中国諜報総元締めまでがCIAに買収され、簡単に国家を裏切ります。それは中国人最大のウィークポイントのひとつです。

 現在ではサイバーウォーの時代ですから、中国人民解放軍内にはハッカー専門部隊がつくられ、世界中の情報を窃取することが諜報活動の主流となりつつあることはご存知のとおりでしょう。

 また、スパイを養成するにはカネも時間もかかるので、近年の中国では、スパイ要因として私立探偵を雇うようにもなっているようです。

 繰り返しになりますが、日本は中国人スパイの格好の活動舞台になっています。日本の公安も中国人大学教授などのスパイ活動を把握はしていても、どうにもならないというのが現状です。

 実際、公安調査庁の報告書でも、沖縄などを中心に、学術界や民間交流を通じて中国に有利な世論を作り上げ、日本国内での分断工作を進めようとする中国の工作活動が報告されています。

 平和・安全な日本社会ですが、日本人は、もっと中国人のスパイ活動に対して警戒心を持つ必要があります。実際、国防動員法がある以上、在外中国人の誰もが工作員になる可能性があるのですから。


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