台湾・屏東に建立の潮音寺が存続の危機!

昨日の産経新聞が「バシー海峡に今も眠る戦友の霊を弔うため、旧日本兵や遺族が私財
をなげうち、1981年に台湾南端部に建立した『潮音寺(ちょうおんじ)』が現地の不動産
売買トラブルに巻き込まれ、存亡の危機に立たされている」と報じた。

 潮音寺は、台湾南部の高雄市から車で約2時間、バシー海峡を望む恒春半島の猫鼻頭に
ある。恒春といえば、今では映画「海角七号」のロケ地としても有名なところだ。

 潮音寺には今年4月末、第11回台湾李登輝学校研修団を行ったときに全員で参拝してい
る。この時は、その建立に尽力した丹羽廉芳師が貫主をつとめる永平寺で修行した松音寺
住職の金山富彦師(宮城県支部事務局長)が読経しご英霊を弔った。

 また、昨年2月末に行った「第3回桜植樹式とお花見ツアー」のときにも立ち寄って参拝
した。このときは、屏東県政府文化部副局長の陳淑倩さんと曹啓鴻県長秘書の曽美玲さん
が私ども一行を潮音寺で待っていて一緒に参拝したが、この訪問の模様は「民衆日報」で
も詳しく報道されている。

 すでに潮音寺は台風や塩害による老朽化が進んでおり、何とか補修できないものかとい
う声は大分前から聞いていた。

 このようなご縁のある潮音寺が不動産のトラブルに巻き込まれ、存続の危機に陥ってい
ることを知ったのは9月半ばのことだった。

 そこで、有志が集まって相談し、本会もその一翼を担い台北駐日経済文化代表処にも相
談に預かってもらった。代表処は屏東県政府などに連絡を入れて調べたその結果、現況は
だいたい判明した。潮音寺のお寺としての登記申請問題もあるが、屏東県政府は受け入れ
る態勢だということなので、産経が報ずるように、存続できるかどうかは土地問題の解決
にあるようだ。

 建立に私財を投じた中嶋秀次氏や、存続に力を尽くしている方々が打開の道を求めて11
月中旬に訪台し、関係者と会って解決の道筋を探ってくる予定だ。日本人として何とか存
続に道を開きたいものだ。                       (編集部)


英霊弔う寺 存亡の危機 台湾南端部に建立「潮音寺」
不動産トラブルに巻き込まれ
【10月26日 産経新聞】
http://sankei.jp.msn.com/world/china/091025/chn0910252212003-n1.htm

 先の大戦で、多くの日本船が撃沈されたフィリピン・台湾間のバシー海峡に今も眠る戦
友の霊を弔うため、旧日本兵や遺族が私財をなげうち、1981年に台湾南端部に建立した
「潮音寺(ちょうおんじ)」が現地の不動産売買トラブルに巻き込まれ、存亡の危機に立
たされている。同寺には現在も年間200〜300人の遺族らが慰霊に訪れており、日台の関係
者は対応に頭を痛めている。                     (喜多由浩)

 「潮音寺」は、バシー海峡を望む景勝地・猫鼻頭(マオビトウ)の丘に立つ仏教寺院。
昭和19(1944)年8月、フィリピン・マニラへ向かう輸送船「玉津丸」に乗船していて米
潜水艦に撃沈され、12日間の漂流の末、九死に一生を得た静岡市の中嶋秀次(ひでじ)さ
ん(88)が数千万円の私財を投じ、遺族の募金と合わせた資金で建立された。

 中嶋さんは、「約5千人が乗船していた玉津丸で助かったのは10人に満たなかった。救
命イカダにしがみつき、わずかに残った食料と水を分け合って救援を待ったが、戦友は日
ごとに減るばかり。最期に私に『水をくれ』と言いながら死んでいった戦友の顔が忘れら
れない。何としてでも、彼らの霊を弔いたかった」と振り返る。

 米軍に制海権を握られた戦争末期、南方へ向かう日本の艦船はことごとく沈められ、バ
シー海峡沿岸にはおびただしい数の日本兵の遺体が漂着した。艦船数は大型船だけで200
隻以上、フィリピンや台湾周辺の海底で眠る英霊は約20万人に及ぶという。やがて潮音寺
は慰霊の拠点となり、遺族らによる慰霊祭も毎年開かれている。

 ところが今年8月、中嶋さんのもとに突然、「(潮音寺の)土地が第三者に転売されて
しまった。買い手は寺をつぶしてホテルを建てたいと言っている」という連絡が入った。
驚いた中嶋さんが調べたところ、信頼した現地の人物に任せていた土地の登記があいまい
になったままで、代替わりした地主の親族が勝手に土地を売ってしまったことが分かった。

 中嶋さんと支援者は問題解決のために、台湾の日本での窓口である台北駐日経済文化代
表処に協力を要請。代表処は、現地の自治体を通じて事実関係の調査を行ったが、民事の
トラブルに当たるため、むやみに介入することもできない。朱文清広報部長は、「基本的
には法律に基づいて当事者同士で話し合ってもらうほかない。いい方向で解決してほしい
のはやまやまなのだが…」と話す。

 11月中旬には、中嶋さんと支援者が現地を訪れ、買い手らと直接、協議を行うことにな
っている。中嶋さんは、「今も海に眠る戦友のために潮音寺をなくすわけにはいかない。
そのことをぜひ理解していただきたい」と訴えている。