台湾を亡国へ導く「中華郵政」への再改名

台湾交通部は5月末、すでに印刷していた8月1日発行の台湾原住民族文化をデザイン
した切手を最後として「台湾」切手の廃止を決定したが、台湾郵政は昨日、取締役会を
開いて「中華郵政」への再改名を正式に決定した。

 これは馬英九総統の選挙公約だった。馬氏は切手に印字の「台湾/TAIWAN」を「中華
民国/REPUBLIC OF CHINA(TAIWAN)」に変更する方針を示していた。

 中華民国こそ正式な国名と主張し、「一つの中国=中華民国」とする馬氏にとっては
選挙公約の既定路線であり、その馬氏を総統に選んだのは台湾の人々だ。民進党政権時
代であっても中華民国憲法を護持してきたのだから、馬氏にしてみれば、何がおかしい
のか、となる。

 だが、これは中華民国体制を維持する台湾国内だけに通じる特殊な論理だ。中華民国
の名称では国連にもWHOにも加盟できず、オリンピックにさえ参加できないのが台湾
の現状だ。中華民国が1971年に国連を脱退したことで、国連がその後継としたのは中華
人民共和国だ。それによって中華民国は消滅したと見做された。それ故に、中華民国と
国交を結ぶ国はないに等しい。

 だが、消滅したはずの中華民国に住む人々は台湾人である。だからアメリカは、中華
人民共和国と国交を樹立すると同時に、台湾への武器供給を主眼とした「台湾関係法」
を作って「台湾人民」を庇護しようとしたのである。

 台湾において、台湾化と民主化はほぼ同じ意義を有している。中華民国から台湾へと
いう道筋が民主化だった。中国人意識から台湾人意識への転換が民主化だった。台湾の
人々が「中華民国体制」を脱しなければならない理由がそこにある。李登輝元総統が台
湾人アイデンティティを唱導し、台湾正名運動をリードした所以だ。李登輝元総統は台
湾の「ハメルンの笛吹き」だった。その先に台湾共和国が見えていた。

 馬英九政権が中華民国にこだわる限り、台湾に未来はないと言ってよい。中華民国と
国交を結ぶ国は出てこないどころか、必ずや「一つの中国」の論理に飲み込まれていく
だろう。だから、馬英九政権による「中華郵政」への再改名は台湾の歴史に逆行する措
置であり、台湾を亡国へ導く悪魔の笛なのだ。「ハメルンの笛吹き」を裏切った町に、
その未来をになう子供は一人もいない。

                   (メルマガ「日台共栄」編集長 柚原 正敬)


台湾郵政 以前の「中華郵政」に名称変更 馬政権発足で
【8月1日 毎日新聞】

【台北・庄司哲也】台湾の公営企業「台湾郵政」は1日、名称を以前の「中華郵政」に
戻すことを決めた。脱中国化路線を推し進めた民進党の陳水扁・前政権下で、公営企業
名にあった「中国」や「中華」は「台湾」に置き換えられ、07年2月に「台湾郵政」に
なったばかりだが、国民党の馬英九政権発足によって元の名称に戻ることになった。

 昨年の名称変更時には、切手上の「中華民国切手」の文字も「台湾切手」に変更され
た。1日発行の最後の「台湾切手」は、収集家のコレクションになりそうだ。

 台湾郵政によると、昨年は看板などの書き換えに1200万台湾ドル(4200万円)の経費
が掛かったが、元に戻すことで新たに800万台湾ドルの出費が発生するという。

 強い独立志向を背景に公営企業名の変更を強行した陳前政権に対し、馬総統は「中華
民国」こそ台湾の正式名称であると主張。国民党主席だった昨年の名称変更の際、「政
権をとったら必ず元に戻す」と約束していた。



投稿日

カテゴリー:

投稿者: