中国の人権問題─抑圧の実態今も変わらず  楊 海英(静岡大学教授)

昨日の本誌で、内モンゴル(南モンゴル)出身の楊海英(よう・かいえい)静岡大学教
授が産経新聞(大阪版)夕刊に寄稿した「尖閣諸島問題 モンゴルと同じ轍を踏むな」を
ご紹介した。

 楊氏は「中国に一方的に採掘されているガス田」問題を取り上げ、「わざわざモンゴル
人の草原内に侵入して灌木を切り倒す植民者たちの活動とその性質が共通している」とし
て、「放置されれば、尖閣諸島や沖縄周辺も住民の人口と政治力の逆転が生じる危険性が
ある。中国の少数民族の轍(てつ)を踏まないことを切に願っている」と警鐘を鳴らして
いる。

 日本にとって有難い進言であり忠告だ。為政者は肝に銘じて中国とのガス田問題に対処
すべきだろう。

 実は、この忠告は今の台湾にも当てはまる。中国を「大陸地区」、台湾を「台湾地区」
として同じ中華民国でくくり、旅行者や就業者をどんどん受け入れ、台湾内に台湾人と結
婚した中国人妻たちだけでつくる「中華生産党」まで容認している。

 楊氏は「いざ、人民解放軍が怒濤(どとう)のように侵攻してきた時に、そこには既に
無数の中国人植民者たちが内応に励んでいた」という、ウイグルやチベットのような憂き
目をみないようにと日本に忠告したが、台湾もまたこのような「トロイの木馬」を放置し
ているように見えるからだ。

 昨日に引き続き、楊氏が最近、静岡新聞に寄稿した一文をご紹介したい。中国という共
産党独裁国家の凶暴な一端が確実に見えてくる。今の中国は、台湾が蒋介石に統治されて
いた時代とほとんど変わらないことが分かる。


中国の人権問題─抑圧の実態今も変わらず  楊 海英(静岡大学教授)
【静岡新聞:平成24(2012)年5月25日「時評」】

 盲目の人権活動家である陳光誠氏は、政府による強制的な人工中絶の実態を告発したこ
とで、本人とその家族が当局から長期間にわたって暴力を受けたとして、在北京アメリカ
大使館に駆け込み、保護された。このほどニューヨークに渡ったが、事実上の亡命であ
る。

 時をほぼ同じくして中東の衛星テレビ、アルジャジーラの記者、メリッサ・チャン氏は
地方からの陳情者を違法に収容する闇監獄の存在を暴いた取材で、国外追放となった。そ
して、2010年にノーベル平和賞を授けられた劉暁波氏は今も牢獄内で外の世界と隔絶させ
られた日々を送っている。中国の人権問題は相変わらず国際社会を巻き込んだ形で、注視
されつづけている。

 こうした人権問題は決して昨今の個別的な事例ではない。内モンゴル畠治区にハダとい
うモンゴル人がいる。内モンゴル師範学院大学の大学院修士課程を修了後に、「モンゴル
学書店」を自治区の首府フフホト市で営んで生計を立てていた。少数民族の自治権は有名
無実で、憲法上で保障された権利が実行されるよう求めたところ、逮捕されて懲役15年の
刑を言い渡された。10年に出所したが、再び軟禁されて家族とも会えずに今日に釜ってい
る。夫の闘争を支えてきた夫人も昨年末に逮捕され、一人息子も大学受験のチャンスを奪
われて、「麻薬を所持した」と因縁をつけられて収監された。どれも証拠も擬派されない
秘密裁判にかけて、刑を確定させている。ほかにも詩人や作家ら20数人が内モンゴルで行
方不明となっている、と国際人権団体から指摘されている。

 モンゴル人だけではない。チベット人女流作家のツェリン・オーセル(唯色)女史も北
京の自宅に閉じ込められ、パスポートを申請する基本的な公民権まで剥奪されている。彼
女は共産党がチベットの寺院を破壊し、虐殺を働いた過程を映した写真集『殺劫』(シャ
ーチェ、集広社)を公開したため、政府の怒りをかったのである。

 かつて治外法権を有する西側諸国の在外公館を「帝国主義のシンボル」だと批判し、中
国共産党は人民をその抑圧から「解放した」と宣言した。しかし、「解放」されたはずの
人民が外国の大使館を「中国でもっとも安全な場所」として仰いでいる事実は何とも言え
ぬ皮肉である。

◇やん・はいいん氏 内モンゴル出身。日本名大野旭(おおの・あきら)。国立総合研究大
 学院大学博士課程修了。歴史人類学専攻。著書に「モンゴルとイスラーム的中国」(風響
 社)、「墓標なき草原」(岩波書店、第14回司馬遼太郎賞受賞))など。


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