【話の肖像画(2)】国民党の戒厳令下で逮捕も  羅 福全(元台北駐日経済文化代表処代表)

産経新聞のコラム「話の肖像画」が昨日(9月13日)から5回にわたり、台北駐日経済文化代表処
代表(駐日台湾大使に相当)や亜東関係協会会長などを歴任した、日本でもなじみの深い羅福全氏
を取り上げている。聞き手は、金谷(かなたに)かおり記者。

 連載第1回の冒頭に記すように、羅福全氏は本年3月、自叙伝『台湾と日本のはざまを生きて─世
界人、羅福全の回想』(藤原書店、陳柔縉編著、小金丸貴志訳)を出版している。

 本書は、台湾のコラムニストの陳柔縉氏による『榮町少年走天下─羅福全回憶録』(遠見天下出
版社、2013年)の日本語訳で、本会会長に就任する直前の渡辺利夫氏(拓殖大学前総長)が序文
「『棄(すつ)るは取るの法なり』の人生を生きた台湾人」を書いていて、羅福全氏を下記のよう
に紹介する。

<羅福全の人生は、一面では、台湾の運命によって余儀なくされた不可避のものであった。しか
し、他面では、国民党のブラックリストに載せられて安住の地を放棄させられ、母上逝去の報せを
受けても帰郷できないという、普通の人間であれば呪うべき己の人生を、まるで逆手に取るように
自在に操り、ついには世界に知のネットワークを張ることに成功した希有の人物である。>


国民党の戒厳令下で逮捕も  羅 福全(元台北駐日経済文化代表処代表)
【産経新聞:2016年9月14日「話の肖像画(2)」】

http://www.sankei.com/world/news/160914/wor1609140004-n1.html
写真:母、姉とともに、幼少期に暮らした東京・久が原の家で(本人提供)

〈昭和20(1945)年、埼玉県内で玉音放送を聞く〉

 学童疎開が東北に移るというので母が私を引き取り、私たちは埼玉の北本宿(北本市)へ移りま
した。伊豆からの帰りは東京大空襲の2日後。列車から見えるのは、焼け野原から立ち上る煙でし
た。米軍が沖縄に上陸したため台湾から私たちへの仕送りが途絶え、古着をイモや野菜と物々交換
しました。米はもう非常に少なく、大豆のかすをご飯に交ぜていましたので、戦後、蒲田(東京都
大田区)の闇市で食べたイカの丸焼きや白米はおいしかったですね。8月15日、重大なニュースが
あるからラジオの方へというので、一緒に暮らしていた日本人の家族や私のいとこ、姉らと集まっ
た。いとこは高校生で、放送が始まると「もう私たちは日本人じゃないから聞かなくてもいい」と
席を外しました。私は「もう空襲はない。われわれは台湾人なんだ」と思いました。

〈21(1946)年2月、氷川丸に乗り、台湾へ帰った。台湾では日本に代わり、中国国民党による支
配が始まっていた〉

 氷川丸は戦時中、病院船として使われていたから、船体は真っ白に塗られて赤い赤十字のマーク
がありました。一般の台湾人は祖国に期待を持って帰ったと思うのです。ところがこの思いは結
局、後に非常に短い時間で砕かれることになります。氷川丸が基隆(台湾北部)に着き、その後、
混雑して窓もない夜行列車に乗り、嘉義へ帰り着きました。駐日代表の時、横浜に保存されている
氷川丸を見に行きましたが、何ともいえない思いでした。

〈国民党は中国で中国共産党との内戦が激化し、台湾への支配を強化。国民党の独裁的な支配に台
湾住民は不満を募らせていく。翌年2月28日、台湾住民と当局による大規模な衝突(二・二八事
件)に発展し、当局が住民に発砲するなど武力で鎮圧。民衆への弾圧は続き、一連の犠牲者は数万
人ともいわれる〉

 嘉義は非常に激しい攻防でした。市内は銃撃戦があるので、母は私たちを連れて市外の親類の家
を渡り歩きました。落ち着いたと思い帰ったところで、駅前で行われた銃殺刑を見ました。うちは
駅から200メートルくらいのところで、2階から見えたんです。トラックの後ろで手を縛られ、首か
ら下げられた白い札には黒い字で何かが書かれ、その上から赤でペケされて。トラックから降ろさ
れたところを、パンと。中には、人望の厚い医者もいました。あのころ、歌がありました。「われ
われは祖国に帰った。ところがその夢は1年ちょっとで破れた」という意味の歌でした。

〈台湾ではその後、38年間という世界最長の戒厳令が敷かれ、“監獄島”といわれたこともある。
その中で学生生活を送った〉

 もちろん日本語はしゃべっちゃいけない。学校では地元の台湾語もだめ。学生の集会は禁止さ
れ、歴史の授業は中華民国の歴史というか、国民党の正統性を学ぶものでした。学校の先生の中に
は特務、いわゆるスパイがいて、校長や先生、学生を監視しています。蒋介石(初代総統)の統治
というのは、この特務で統治しているようなものでした。私は中学2年のとき、身分証を携帯せず
に旅館に泊まったため逮捕され、迎えが来なければ離島に送ると脅されたことがあります。

                                 (聞き手 金谷かおり)

                   ◇

【プロフィル】羅福全(ら・ふくぜん)
1935(昭和10)年、台湾・嘉義市生まれ。41年に日本へ行き、終戦を迎える。46年に台湾へ戻り、
58年に台湾大学を卒業。60年に早稲田大学に留学し、修士号取得。63年に米国ペンシルベニア大学
へ留学し、地域科学博士取得。73年から国際連合職員となり、国連地域開発センターや国連大学な
どで勤務。2000年、台北駐日経済文化代表処代表。04年、台湾の対日窓口機関、亜東関係協会会
長。現在は民間団体、台湾安保協会名誉理事長。


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