【書評】浅野和生編著『民進党三十年と蔡英文政権』(展転社) 宮崎 正弘

苦節30年、台湾本省人の悲願がようやく実りつつある
「『中国は一つ』には縛られない」とトランプの爆弾発言まで
【宮崎正弘の国際ニュース・早読み:平成28年(2016)12月18日】

 最初は地下運動だった。創設は秘密メンバーで、戒厳令下に民進党は結党へ向けて密かにスター
トした。

 蒋介石国民党の独裁時代、野党の存在は許されていなかった。台湾は蒋介石外来政権の体制下、
言論の自由は封じ込められていた。

 70年代後半からアメリカの圧力もあって、緊張緩和が進み、このころの台湾は治安もたいそう安
定しており、夜中まで飲み屋も開いていた。台湾独特の文化がかたちづくる、台湾版銀座=『酒
家』も繁盛していた。驚いたのは街角で「党外雑誌」が売られていたことである。

 国民党を批判した書物がおおっぴらに売られていたのだ。

 表面的に違法だから取り締まりの対象だが、警官も見てみないふりをしていた。書店を覗くと、
カーテンで仕切られた奥の部屋には『発禁書』が並んでいた。日本語の書籍も輸入が禁止されてい
たのに、夥しい日本からの書籍があった。

 これらは評者(宮崎)が直接、台湾で目撃したことで、仕事のため、しょっちゅう台湾へ行って
いた時代である。本省人の人々と会うとおおっぴらに蒋経国を批判していた。獄中にあった独立分
子も釈放される措置が次々にとられた。

 88年に蒋経国が急死し、李登輝が総統代行となる。

 そして1986年9月28日、台北の圓山飯店で「民進党」が合法的に結党され、本格的な政治活動が
始まる。長い道のり、外国へ亡命していた独立運動の活動家らも、陸続として台湾へ帰った。

 『民主進歩党』という党名を提案したのは謝長挺である(後年、行政院院長=首相、08年の総統
候補、現駐日台湾大使(台北経済文化代表処代表))。

 謝は、そのとき『民主的包容、進歩的取向』という理想を表す十文字が念頭にあった。

 はじめての民主選挙による総統選挙は1996年だった。

 民進党は独立運動のカリスマ彭明敏を擁立し、李登輝に反感をもつ国民党反主流派は林洋港をた
てて臨んだ。無所属からも王履安などが立候補したが、結局圧倒的過半で、李登輝が当選した。

 李登輝は以後、静かに、しかし決然と国民党の古い体質を変え、蒋介石時代の独裁のシステムを
破壊していく。これを李登輝の「千日革命」という。

 台湾に本格的な民主化が始まり、2000年には国民党の分裂で「漁夫の利」を得て陳水扁が総統と
なった。2008年には馬英九に奪回され、しばし民進党は「冬の時代」を送った。

 馬英九は外省人であり、急速に北京に近づき、独立路線を消した。

 雌伏8年、2016年1月、蔡英文は圧倒的支持を得て、国民党を破り、また議会でも民進党がはじめ
て多数派となった。

 72年の日華断交以来、民間交流しかなかった日本外交に大きな『変化』が起きた。

「蔡英文の当選が決まった1月16日夜に、岸田外相が『基本的な価値観を共有し、緊密な経済関係
と人的往来を有する重要なパートナーであり、大切な友人』と台湾を評し、『祝意』を表した」
(66p)

 しかし、絶対安定多数を獲得した民進党であるにもかかわらず「蔡英文は、『改革を支持するす
べての人たちと一致団結』するため、民進党で権力を独占せずに、すべての力を結集する政府を目
指した」

 謝長挺が提唱した「民主的包容」のキャッチフレーズが蘇った。

 とはいえ、蔡英文政権は『一つの中国』に就任演説では言及しなかった。北京の度を超した罵倒
がつづき、中台の政治的交流は頓挫したが、それは台湾民衆多数が望むところであり、大陸から台
湾への観光客は激減した。

 そして、大変革の波が米国からやってきた。

 トランプ次期大統領は蔡英文の祝賀電話に応じたばかりか、「中国にアメリカは指図されない。
『一つの中国』政策には縛られない」と爆弾発言をするに至ったのである。

 過去30年の動きを、多角的に検証したのが本書である。

                ◇    ◇    ◇

・書 名:民進党三十年と蔡英文政権(日台関係研究会叢書3)
・編著者:浅野和生
・体 裁:四六判、並製、248頁
・版 元:展転社
・定 価:1,700円+税
・発 売:平成28年12月20日
 http://tendensha.co.jp/


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・青 森:12月10日〜 シネマ・ディクト(017-722-2068)
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・東 京:12月24日〜 シネマート新宿(03-5369-2831)
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・静 岡:01月07日〜 静岡シネ・ギャラリー(054-273-7450)
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・兵 庫:01月21日〜 元町映画館(078-366-2636)
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・大 分:01月21日〜 別府ブルーバード劇場(0977-21-1192)
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・王育徳著『台湾─苦悶するその歴史』(英訳版)
・浅野和生編著『1895-1945 日本統治下の台湾
・片倉佳史著『古写真が語る 台湾 日本統治時代の50年
・王明理著『詩集・故郷のひまわり』
・李登輝著『新・台湾の主張
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