【投稿】元高砂義勇隊の本音−ハパープリンクラサイさんについて

高金素梅は戦争のことも靖国神社のことも知らないと憤る台湾原住民

 台湾の原住民だという高金素梅議員たちの来日に関して、昨日のメルマガ「台
湾の声」に「高金素梅率いる高砂義勇隊の『遺族』団が6月12日に来日し、13日に
靖国神社で高砂族の御霊を取り戻す要求を行うとあった(今回はすべての台湾人
の魂の奪還要求をするともいわれる)。たしかに8日の記者会見で、『12日に日本
に向かう』と語ったという報道があったが、その後に私が得た情報によると、彼
女は13日に来日し、14日午前に靖国神社を冒涜する計画だ」という投稿が掲載さ
れています。
 また、「彼女は東京〜箱根〜富士五湖〜名古屋(愛知万博)〜京都……と物見
湯山に多忙です」というお便りもいただいています。
 いずれにしろ、日本国内でいわゆる「A級戦犯」分祀についての議論かまびす
しい時期の来日となるわけで、話題となりそうです。
 分祀問題については、中曽根元首相などが分祀論を進めようとしていますが、
すでに当の靖国神社が正式に「神道の教学上、不可能」だと発表し、同社前宮司
の湯澤貞氏や国学院大学の大原康男教授など専門家の方々も同様の見解を発表し
ています。さらに全国の神社を束ねる神社本庁も9日に同様の基本見解を発表し
ています。
 分祀と分霊は同じ意味で、ある神社のご祭神を別の神社に分祀することはでき
ますが、分祀したからといって、元の神社の御霊がなくなってしまうことはけっ
してありない、というのが結論です。いったんお祀りしたご祭神をはずしたり取
り除くことは、神道の教義上、ありえないそうです。
 つまり、分祀問題はこれで決着していますので、台湾の高金素梅氏たちがいか
に靖国神社に祀られている旧日本軍の台湾出身軍人軍属の御霊を分祀させよう、
魂を奪還しようと掛け合っても、所詮無理なことは判明しています。
 したがって、高金素梅氏たちがこの期に及んで靖国神社に押しかけるのは、単
なるパフォーマンスとみなされても致し方ありません。17日に行われる大阪高裁
の靖国裁判のために気勢をあげるのが目的であり、「遺族」と称する人々を日本
見物に連れてくるための名目でしかないとみなされるのも、衆目の一致するとこ
ろではないでしょうか。
 靖国神社は神聖な場所です。その境内でのいざこざは好ましくありません。す
でに結論が出ているのですから、高金素梅氏たちにはご遠慮願いたいところです
。しかし、どうしても靖国神社と掛け合うというならば、きちんと昇殿参拝して
慰霊の誠を尽くし、神道の教義に素直に耳を傾けるという真摯な姿勢で臨んでい
ただきたいと願うのは、けっして編集部だけではないと思います。
 このような中、本誌読者の「佐賀の哈台族」さんからご参考になるお便りをい
ただきましたので、ご紹介します。高金素梅氏が台湾原住民の考えを代表してい
ないことは、この一文からもよく分かります。むしろ、高金素梅氏とは反対の人
々が少なくないことを示唆しています。
                               (編集部)


元高砂義勇隊の本音−ハパープリンクラサイさんについて
                        
                            佐賀の哈台族

■テレビでクラサイさんを見て
 私の知人に、元高砂義勇隊のハパープリンクラサイさん(日本名:岡田耕治、
中国名:陳徳儀)がいます。彼は台東在住のピュマ族、85歳で、先の大戦では
インドネシアのモロタイ島で、かの中村輝夫(原住民名:スニヨン、中国名:李
光輝)と同じ部隊でした。
 私は今まで4度遊びに行きましたが、きっかけは、テレビで高砂義勇隊の特集
をやっていて、それにクラサイさんが出ていたのを私が見たことでした。その時
、クラサイさんが「俺は補償なんか要らない。俺は自分が戦いたくて戦争に行っ
たんだ。俺は日本人だという気持ちで戦ったんだ」と言っているのを見て、心を
動かされました。それで、テレビに出ていた村の名前とクラサイさんの中国名だ
け書いて手紙を出したところ、返事が来たという次第です。

■オートバイに2人乗り
 クラサイさんはおもしろい人で、日本語で自分の戦争体験記を書いたり、自分
で家の裏に日本風の家を作ってしまったり、全部挙げるときりがないので省略し
ます。
 私が遊びに行った帰りはいつも台東駅までオートバイ(原付)で送ってくれま
す。こないだ5月上旬に行った時は、駅まで迎えに来てくれました。85歳のお
じいちゃんのオートバイに2人乗りするのはかなり怖いものがありますが、クラ
サイさんは乗れと言って聞きません。4月にあけぼの会の門脇さんが来たそうで
すが、その時もオートバイで迎えに行ったそうです。90歳前後のおじいちゃん
が原付に2人乗りしている様子は、想像するだけでも心配になります。
 駅から家に向かう途中、私が「お腹減った」と言ったら、クラサイさんの親戚
がやっているという弁当屋さんに連れていかれました。とてもおいしかったのは
さておき、そこの娘さんたちはみな日本語を話せました。また親戚の1人は東京
の郵便局に勤めていると言っていました。日本から見ると地の果てのような台東
ですが、意外と日本と近いところがあるんだと、不思議な気持ちになりました。
 ところで、高砂族は3つの名前を持っているのですが、私がクラサイさんを呼
ぶ時、どの名前を呼ぶのが一番適当か、親戚たちに聞いてみました。クラサイさ
ん本人は以前、「年上の人たちはクラサイ(もうほとんど生きておられんやろ
ね)、同年代の人や教え子(クラサイさんは元小学校の先生でした)は岡田さん
、岡田先生、もっと下の年代は陳さん」と言っていましたが。親戚たちは、「自
分たちはただ『おじいさん』と呼ぶのでそんなことあまり考えたことはないが、
クラサイでいいんじゃない? 陳徳儀はおかしいねえ」と言っていました。

■高金素梅氏のとんでもない勘違い
 さて、やっと本題に入りますが、クラサイさんは高金素梅について「戦争のこ
とを何も知らないくせに、あの女が」と非常に憤っていました。
 クラサイさんは、「靖国神社の台湾兵の霊を台湾に移そうと言っているが、と
んでもない勘違いだ。靖国神社では、亡くなった台湾の人たちに対して日本人が
慰霊の気持ちを持っているから祀っているんだ。もし台湾の人が同じように慰霊
の気持ちを持つのだったら、靖国神社を台湾に作ればいいじゃないか。これは気
持ちの問題なのだから、同じ人を慰霊する場所が日本と台湾の両方にあっても全
然おかしくない」と言っていましたが、なるほどと思いました。
 私が烏来の高砂義勇隊慰霊碑の写真をプレゼントしたところ、クラサイさんは
「これができる時、私は知らなかった。台湾全土で募金をすれば、私は寄付した
ろうし、必ずお参りに行く」と言っていました。
 クラサイさんは河崎真澄著『還ってきた台湾人日本兵』にも出ています。その
筋での、ちょっとした有名人かもしれません。



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