【台湾修学旅行】 日台友好の架け橋〜台湾修学旅行を実施して  白濱 裕(前熊本県立大津高校校長)

高校の修学旅行先として、これまで中国や韓国を選択するケースが多かったが、今年は
様相を一変、台湾への修学旅行が大幅に増えた。

 いささか古い統計だが、文部科学省がまとめた平成20(2008)年度の資料によれば、公
立・私立の高校における海外への修学旅行先は34カ国にのぼっていて、上位10カ国は、1)
アメリカ:225校、2)オーストラリア:215校、3)韓国:196校、4)シンガポール:161
校、5)マレーシア:131校、6)中国:97校、7)カナダ:63校、8)台湾:55校、9)フラ
ンス:53校、10)英国:39校となっている。

 中国は平成16年度に102校(4位)、18年度に131校(5位)も行っていたが、調査のたび
にランクを落としている。そして今年は、尖閣国有化を端緒に反日感情が高まり、暴動が
起こったことなどで、行き先を中国から台湾に変更するケースが相次いだ。

 日本李登輝友の会は活動の一環として「日台相互交流の推進」を掲げ、「台湾の政治・
学術・文化関係団体との相互交流を推進し、修学旅行や日台留学生などの相互受け入れ、
自治体や議会などによる姉妹提携や親善交流をめざした活動の促進を図る」ことを目的と
していることから、台湾への修学旅行のお手伝いをし、本誌でもできるだけ台湾への修学
旅行のニュースなどを紹介している。

 熊本県立大津高校は昨年12月、熊本県の公立高校として初めて、台湾への修学旅行を実
施した。このことは本誌で何度かご紹介した(下記参照)。

 大津高校は今年も12月4日から7日に台湾修学旅行を実施し、すでに来年も台湾への修学
旅行を決定しているという。熊本県教育委員会はこの実績に鑑み、公立高校の海外修学旅
行先としてこれまでの中国と韓国に台湾を加えた。

 昨年、いろいろな障害を乗り越えて初の台湾修学旅行を実施した白濱裕(しらはま・ひ
ろし)前大津高校校長から、その意義や生徒の感想などを改めて寄せていただいた。

 ちなみに、白濱氏は校長を退職後、本会熊本県支部の副支部長に就任、廣瀬勝(ひろ
せ・まさる)支部長、内田圭二(うちだ・けいじ)事務局長らと「熊本県下の高校の修学
旅行における目的地を台湾へ薦める運動」を支部活動の一環として取り組んでいる。

◆熊本県の大津高校が台湾への初修学旅行を前に金美齢さんを招いて講演会
 http://melma.com/backnumber_100557_5320852/

◆先人に学ぶ日台友好の絆─台湾修学旅行を通して 白濱 裕(熊本県立大津高校校長)
 http://melma.com/backnumber_100557_5345229/


日台友好の架け橋〜台湾修学旅行を実施して  白濱 裕(前熊本県立大津?等学校長)
 
 最近、外国への留学生の減少に見られるように、我が国の若者の「内向き志向」が指摘
されています。世論調査の国際比較でも、特にアジア諸国の若者と比較して、勉学への意
欲や愛国心等において極端に低いデータが出ています。このような背景を踏まえ、グロー
バル化が進展する今日、国際感覚を磨き、日本人としての自覚を持たせるためにはまずパ
スポートを取らせ、日本を一歩出て外国の若者と交流することが第一歩であると考え、大
津高校では、昨年末、台湾への修学旅行を実施しました。

 「なぜ台湾か?」というと、まず、修学旅行で最優先に配慮すべきことは、生徒の安全
確保です。その点、台湾は親日的な人々が多く治安も良い。また、日本統治時代の建物や
遺跡が大切に保存されており、それらを訪れることにより台湾のために尽くした先人の遺
徳を偲び、日本人としての誇りと自覚を深めることができる。また、バシー海峡や台湾海
峡は日本の死命を制するシーレーンであり、地政学的な国際認識を深めるためにも最適で
ある。その他、十二月の台湾は気候も温暖で、旅行費用もリーズナブルであるという点な
どを考慮して選定しました。

 さて、台湾への修学旅行は本県の県立高校で学年単位としては初めてということで、交
流校や見学場所の選定、生徒の安全確認のため数度にわたって渡台し、入念に準備を行い
ました。また、「物見遊山」の旅行に終わらせないために、台湾の歴史や地理、国情など
について、事前にしっかり学習して臨むことが必須であると考え、10月には台湾出身で日
本に帰化された金美齢氏をお招きし、生徒たちに「二つの祖国〜日本と台湾」と題するご
講演を頂きました。

 金美齢氏は、日本統治下の台湾で、荒れ地を肥沃な水田地帯にするため、八田與一技師
が建設のため心血を注いだ東洋一の「烏山頭ダム」や、台湾教育に身命を捧げ芝山巌に眠
る「六士先生」の事績などについて紹介され、日本と台湾は運命共同体であり、東日本大
震災に際して200億を超える世界一の義捐金が寄せられた背景には、台湾のために血と汗を
流したこれら日本人の存在があることを熱心に話されました。

 さて、12月7日、チャーターしたジャンボ機で阿蘇くまもと空港から飛び立ち、3泊4日の
日程で台北市の芝山巌や台南の烏山頭ダムなどの史跡見学や、現地高校生と交流しまし
た。交流会では、金美齢氏デザインによる「多謝」と染め抜かれたTシャツを着た代表生
徒が、多額の震災の義捐金に対する謝辞を記した横断幕を掲げてお礼の言葉を述べ、双方
から剣道の型や儀仗隊演技の披露、女子バスケットボールの親善試合などを通して友好を
深めました。

 また、生徒たちは、日本語を学んでいる台湾の生徒と一緒に台北市内の班別自由行動を
行いましたが、夕方、ホテルでの涙の別れのシーンは今でも瞼に焼き付いています。

 生徒の感想文を読みますと、生徒達は、烏山頭ダムなど各地の史跡を訪ね、我が国の先
人が遺した偉業に感嘆するとともに、台湾の若者の語学力とパワーに圧倒されながらも、
「世界の中の日本」を意識し、日本人としての自覚と誇りを蘇らせてくれたようです。

 唯一の心残りは、李登輝元総統のご講演を氏の内諾を頂きながら、諸般の事情により断
念せざるを得なかったことです。ただし、予定した時間に元総統とご親交のある、司馬遼
太郎氏の『台湾紀行』に老台北として登場する蔡焜燦氏に「台湾人と日本精神」と題して
ご講演を賜ったことは、生徒にとって感銘深い忘れられない経験となったと思っています。

 李登輝元総統は、近著(『日台の「心と心の絆」素晴らしい日本人へ』宝島社)の中
で、東日本大震災の折、惨状の中でわが同胞が見せた秩序と思いやりの精神に「武士道の
精神が今も生きている証」であると賛嘆され、「台湾には日本の精神が今も生き続けてい
ることを知り、感銘を受けた人々が数多くいます。さまざまな形で行われた復興支援や200
億円を超えるという巨額の義捐金が話題となりましたが、それは台湾人と日本人が心の絆
で結ばれているからだと思います。そして、その絆は永遠に生き続けていくと思われま
す。」と記しておられます。

 李元総統は、先年、来熊された折、芝山巌で土匪に襲われ弱冠17歳で非命の死を遂げた
「六士先生」の一人、熊本出身の平井数馬氏の小峯墓地の墓に詣でられました。願わくば
世界的指導者の一人李元総統の謦咳に触れる機会を、是非、熊本の若者にも得させたいと
思うのは私だけではないと思います。

 往年の岩倉使節団を初め、最近の海外チームに籍を置くサッカー日本代表の若者達の活
躍を見ても、島国に暮らす日本人は外国体験によって覚醒するDNAを持っているようで
す。「たかが修学旅行、されど修学旅行」。あらゆる面で国際化の波が押し寄せる中で、
世界を舞台に雄飛する若者の育成に、熊本から近距離で治安も良く、親日的な台湾への修
学旅行を大いに推奨するものです。必ずや、かつて台湾で活躍した後藤新平や新渡戸稲造
のような、真の国際人が熊本から誕生するきっかけになると確信しています。

 と同時に、今後、本県の高校が陸続として台湾への修学旅行を実施することにより、ひ
いては「阿蘇くまもと空港」国際線の活性化、本県と台湾間の観光・物産等の振興に繋が
ればと念願しています。

【生徒短歌作品】

秋の日に異国の地へと旅立った心優しき麗しの国へ
交流会みんなで楽しくしゃべったよ班行動も楽しかったね
女子バスケ意地の張り合い白熱戦力出し切り結果に笑顔
自主行動自分たちで行動し深まりあってくみんなの絆
台湾も大切なのは英語力使いこなせば世界広がる
八田さん台湾の歴史に名が残る存在大きい日本の先輩
台湾に潤い齎(もたら)す烏山頭汗と涙の努力を残し
台湾のいろんな所見てまわり心に残る人の優しさ
初めての台湾旅行忘れないみんなと一緒に過ごした時間
初めての台湾の地で学んだよ日本人って愛されていると
台湾で人に出逢って気付かされた二つの国のそれぞれの良さ

【生徒感想文】 一年 男子

 私は、今回の修学旅行で、蔡焜燦さんの講演会で謝辞を述べさせていただきました。そ
こで、事前学習で蔡焜燦さんの『台湾人と日本人』という本を読み、日本の植民地統治の
イメージが一変しました。歴代の総督による上下水道、鉄道、道路などのインフラ整備や
八田與一さんの烏山頭ダムなどの経済の基盤になる財産や教育という知的財産も台湾に大
きな影響を与えました。植民地が他国から一方的に支配され利用されるものだと思ってい
た私は、これらの政策にとても驚きました。と同時に以前の私を含めて多くの日本人が知
らない現実に強い憤りを覚えました。

 私はもっと多くの日本人に運命共同体である台湾について知ってほしいと思います。台
湾の歴史を知り台湾の人と話せば、必ず改めて日本の素晴らしさを知ることができます。
日本の文化はもちろんのこと、今の日本人が忘れかけている日本人の精神を学ぶことがで
きます。「勤勉で約束を守る」という日本精神は世界に誇れる素晴らしい日本の文化で
す。今を生きる私たちが改めて日本の文化を守り、後世に伝えるため、何をすべきで、何
ができるのか、そしてどう実行するのかを深く考えるべきだと思います。


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