「正名」「脱蒋氏」動き加速[西日本新聞台北市局長 遠矢浩司]

「正名」「脱蒋氏」動き加速 台湾・陳政権と与党 総統選にらみ野党けん制
【3月19日 西日本新聞】

 1年後の総統選へ向けて候補選びが本格化してきた台湾で、陳水扁政権と与党・民主進
歩党(民進党)が、正名(企業名などの脱「中国化」)政策や故蒋介石総統の威光否定の
動きを急速に推し進めている。14日には「台湾最大級」とされる蒋介石像を撤去。陳総統
は「台湾主体化」路線に傾斜した発言を繰り返しており、総統選でのライバルである最大
野党・中国国民党へのけん制や中国の全国人民代表大会(全人代=国会)開催を意識して
いるとみられる。 (台北・遠矢浩司)

 陳総統は今月4日夜、台湾独立や正名、新憲法制定を推進する「4つの必要と1つのノ
ー」方針を表明した。発言は具体的目標を盛り込んでおらず抽象的だが、従来より踏み込
んだ内容だ。

 しかし、立法院(国会)では野党が多数を占めており、陳総統の任期中の新憲法制定は
困難な状況。台湾独立も「台湾は固有の領土」と主張する中国や、中台両岸の安定を望む
米国との関係を考慮すると急速な進展は望めない。

 そこで、政権と与党が進めているのが正名と「脱蒋介石」の動きだ。正名は、公営企業
の多くが蒋介石総統が率いた国民党独裁政権時代から「中国」「中華」を名乗っており、
これを「台湾」に改めるもの。先月、方針表明から約1カ月で「中国造船」「中国石油」
「中華郵政」をそれぞれ「台湾国際造船」「台湾中油」「台湾郵政」に改名した。

 さらに12日、政権高官は、台北市にある台湾中油の本社を民進党の支持基盤である南部
の高雄市に移転する可能性についても言及している。

 これに連動して蒋氏の威光否定も進めており、今月2日に行政院(内閣)が蒋介石の名
にちなむ中正紀念堂(台北市)の改名方針を決定。軍施設などからの蒋介石像の撤去も進
む。昨年12月の市長選挙を民進党が制した高雄市は13日から14日にかけて、市文化センタ
ーの名称「中正文化中心」から「中正」の文字を外し、中正紀念堂の銅像と並ぶ高さ6メ
ートルの蒋介石座像を解体、撤去した。今後は、当局が管理し衛兵が守る中正紀念堂の銅
像や展示内容の変更が焦点となる。

 また、14日は中国が台湾への武力行使を全人代で決定した反国家分裂法制定から2年に
あたり、民進党はこれに反対する声明や世論調査結果を連日発表。「台湾は将来、独立に
向かうべきだ50%」(13日)「北京の言う『台湾は中国の領土』に81%が同意せず」(14
日)「台湾は主権独立国家69%」(15日)と、台湾人意識に訴える呼び掛けを行って
いる。

 これに対し、国民党は強く反発しているものの、神格化された権力者の威光否定につい
て市民の間に強い異論はなく、反対運動は盛り上がっていない。同党の馬英九前主席は
「2008年総統選で政権を奪還すれば改名された公営企業の名を元に戻す」と表明しており
、正名や脱蒋氏の動きは総統選の争点の1つとなりそうだ。


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