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花蓮縣・舞鶴の台湾コーヒー物語  加藤 秀彦(台湾の声編集部)

【台湾の声:2018年4月24日】

 震災支援も兼ねて、旅行先に花蓮を考えている方もいるのではないでしょうか。

 近年、台湾旅行のガイドブックは増えていますが、その多くは台北近郊や台南・高雄など台湾西海岸の紹介がほとんどです。花蓮の様な東海岸の情報はまだまだ少ないですね。

 そこで今回は花蓮情報として、花蓮縣瑞穂郷舞鶴のコーヒー物語をお届けします。花蓮市内から離れていますが、花蓮旅行で舞鶴の東昇茶行を訪ねてみてはいかがでしょうか。

★隠れた名品・台湾コーヒー

 台湾の飲み物と言えばお茶やタピオカミルクティーを思い浮かべる人が多いと思います。もちろん台湾ビール・紹興酒・高粱酒もいいですね。でも実は台湾コーヒーも最近注目を集めており、2012年にはアメリカのUSA today誌が選ぶ「世界10大コーヒー」に東アジアから唯一台湾コーヒーが選ばれています。

 阿里山、雲林縣古坑、そして花蓮縣瑞穂郷舞鶴がコーヒーの産地として有名です。特に舞鶴は日本統治時代からコーヒー栽培が始まり、樹齢100年を超えるコーヒーの老木もあります。

★台湾コーヒーの父・国田正二

 花蓮一帯は日本統治時代には「花蓮港」と呼ばれており、大正時代ごろまでは「波が荒くて入れん港、一度入ると帰れん港、米がまずくて食われん港」と言われるほど開拓困難な土地でした。そんな花蓮の舞鶴でコーヒー栽培を始めたのは国田正二・花蓮港庁庶務課産業技手です。国田正二技手は1930年(昭和5年)に総統府の命を受けてコーヒーの栽培に適した場所を探しました。そして掃叭(サッパ:現在の舞鶴)台地が栽培に適していることを見つけ、ここを開拓し始めました。

 開拓は決して簡単な道ではありませんでした。掃叭台地は山深く毒蛇や猛獣が出没し、台風や伝染病の襲来もあり、まさに命がけの開拓でした。国田正二技手は地元の名士・馬有岳の協力も得つつ、この困難に立ち向かい続けました。ついには住田珈琲株式会社を設立し、300甲(約88万坪)を超える農地で生産を始め、地域雇用創出にも大いに貢献しました。艱難辛苦を乗り越えて生産したコーヒーを天皇陛下に献上したところ、陛下は大変喜ばれ皇室御用達の品となりました。いつの日か国田正二は「台湾コーヒーの父」と呼ばれるようになったのです。

★時代の流れに翻弄される台湾コーヒー

 広大なコーヒー農園も歴史の波に翻弄されます。戦時中は食糧増産のため、コーヒーから戦時糧食の生産に徐々に切り替わりました。戦後は台湾人がコーヒーよりお茶を好む傾向があったため、コーヒーの生産は衰退の一途をたどりました。

 国田正二技手は終戦で内地へ引き上げましたが、その後も花蓮のコーヒー農場を常に気にかけていました。国田正二技手は花蓮生まれの息子・国田宏氏に「いつの日かきっと舞鶴へ戻るんだ」と語っていましたが、ついに舞鶴へ戻ることなく90歳で天寿を全うしました。

★粘文貴氏による再発見

 時は進んで1967年、台湾人の粘文貴氏が彰化縣から舞鶴の地に移り住みました。粘文貴氏は当初パイナップルなどを栽培していましたが、紅茶や台湾茶の生産に向いた土地であることに気付き、東昇茶行をおこしました。お茶の生産・販売を進めるうちに農地に点々とあるコーヒーの木を発見しました。その頃になるとコーヒーを栽培する農家はほとんどなく、コーヒーの木は放置されていたのです。粘文貴氏はコーヒー栽培の由来を調べるうちに国田正二技手を知りました。粘文貴氏は開拓に尽力し、台湾人の生活を豊かにしたコーヒー栽培が忘れ去られていることに心を痛めました。そこで点在するコーヒーの木を東昇茶行の土地に移植してコーヒー農園を再開しました。現在は娘の粘阿端氏に世代交代しましたが、コーヒー農園は守られています。

★後世に伝える台湾コーヒー物語

 東昇茶行には移植したコーヒーの木だけでなく、国田正二技手の功績を讃える石像もあります。しかし国田正二技手のみならず粘文貴親子も讃えるべきではないでしょうか。50年前に途絶えかかっていたコーヒー栽培の歴史を見つめ直し、現在までコーヒー農園を守り続けた親子の存在も日本人として覚えておきたいです。

・東昇茶行 花蓮縣瑞穗?舞鶴村十三鄰256之1號


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