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激化する「米中海戦」、日本はどう処すべきか  徳地 秀士(初代防衛審議官)

【東洋経済オンライン:2018年1月29日】http://toyokeizai.net/articles/-/205799

 1月11日、中国海軍の原子力潜水艦が尖閣諸島沖の接続水域を潜没航行し、日本政府が中国へ抗議する事態となった。年々エスカレートしている中国の海洋進出。その驚くべき実態を描いた本『米中海戦はもう始まっている』(原書名:CRASHBACK)が発売された。

 「米中は現在、西太平洋上で戦争状態にある」という一文で始まる本書は、東シナ海や南シナ海で起きた米中海上事件の知られざる全貌を描き出している。中国機に体当たりされた米軍機が操縦不能に陥った「海南島事件」や、米軍艦が公海上で中国船団に包囲された「インペッカブル事件」など、衝突事件の現場では唖然とするような事態が起きている。本書を、初代の防衛審議官を務めた徳地秀士(とくち・ひでし)氏が読み解いた。その解説の全文を掲載する。

◆中国―アメリカ間でこの15年に起きた海上事件の数々

 中国は領土の防衛、台湾の独立阻止、独自の領有権主張の強化といった目標に加え、天然資源などの海洋権益獲得、海上交通路の確保などを目標に、東シナ海、南シナ海、そしてインド洋やさらにその先まで海洋進出している。本書で描かれるのは、そうした進出を続ける中国と、アジア太平洋地域という、海を主体とする広大な地域でプレゼンスを維持するアメリカとの間で実際に起きた、この15年ほどの非常に緊迫した海上事件の数々である。

 本書のタイトルは『米中海戦はもう始まっている』だが、序章ではっきりと述べられているように、これは「温かい戦争」という新しい「戦争」の形を指している。かつてアメリカとソ連の間で繰り広げられた「冷たい戦争」では、アメリカはソ連を封じ込め、孤立させることによって崩壊に導くことを戦略としていたが、今の中国に対してそのような戦略をとることはできない。

 それは、中国が世界第2位の経済大国となり、アジア太平洋地域の経済が中国をハブとしているからというだけではない。グローバリゼーションは国際社会をボーダーレスな「地球社会」に変化させつつある。その「地球社会」におけるグローバリゼーションの負の側面(たとえば国際テロ、海賊などの非伝統的な課題)に対応するうえで、中国はアメリカにとっても重要なパートナーになっているのである。たとえば、アフリカのソマリア沖アデン湾においては、中国も日米をはじめとする多くの国々の海上部隊とともに、海賊対策の任務に当たっている。

 その一方で、中国は国際社会の確立されたルールを無視して、海洋進出をエスカレートさせている。本書は、海上における米中衝突の事例を具体的に描くことで、そうした「温かい戦争」の実像を示してくれる、優れたドキュメントだ。

 2017年10月に開催された中国の第19回共産党大会の政治報告において、習近平総書記は、「南シナ海における島嶼の建設」や「海上の諸利益の擁護」を過去5年間の成果として挙げ、また中国軍を「今世紀中葉までに世界一流の軍隊にするよう努める」とした。

 そのような中で、地域の安定と海洋の秩序回復のために日本が果たすべき役割は大きい。そもそも、日本は地理的に、中国の海洋進出の直接的な影響を受ける数少ない国の1つである。国土の東西に海のあるロシアなどとは異なり、中国の海洋進出は必然的に東の海に向かう。つまり日本は、海洋進出を狙う中国にとって正面に立ちはだかっている壁のような位置にあるのだ。

 本書の第5章でも紹介されている、尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した2010年の事件や、中国海軍のフリゲート艦が海上自衛隊の護衛艦に火器管制レーダーを照射した2013年の事件は、今も記憶に新しい。では、こうした東アジアの海における中国の動きに対して日本はどう対応すべきか。本稿では、3つの点に絞って述べていきたい。

◆中国は力の空白に乗じて南シナ海に進出している

 第一は、日米同盟の強化である。日米同盟は海洋国家の同盟であり、また日本の安全保障の基軸をなすものである。海洋の自由は、日米両国の共通利益である。このことが変わることはないし、今後も日本がこの地域におけるアメリカの最重要パートナーであり続けるということにも変わりはない。

 では、日米同盟の強化として何をすべきか。南シナ海の歴史をさかのぼれば、中国は力の空白に乗じて南シナ海に進出していることがわかる。1950年代、フランスが東南アジアから撤退した後、中国は西沙諸島の半分を占拠し、1970年代にアメリカが南ベトナムから撤退すると、西沙諸島全域を支配した。1980年代にはベトナムにおけるソ連軍の縮小の後、南沙諸島に進出し、1990年代にはアメリカ軍がフィリピンから撤退した後にミスチーフ礁を占拠、さらに2000年代には南シナ海南部に進出している。

 本書ではその後、すなわち2000年代以降の中国の海洋進出が描かれているが、なかでも第9章に詳しく書かれている南シナ海の状況と比べれば、尖閣諸島を含む東シナ海では、中国の行動は不当なものではあっても、烈度は相対的に低いように見える。

 それは、東シナ海においては海上保安庁と自衛隊、そしてその背後にはアメリカのプレゼンスがあるからである。重要なのは、今後も引き続きすきを作らないことだ。日本はアメリカ軍のプレゼンスの強化をしっかりと支え、また、日本自身の体制も強化していかなければならない。

 今、アメリカ側のトップにいるのはトランプ大統領である。そのトランプ政権の安全保障政策は、これまでの歴代政権がとってきた同盟重視の政策に回帰しつつあるとみてよい。2017年12月18日に発表されたばかりの国家安全保障戦略でも、トランプ政権は「同盟諸国とパートナーは、アメリカの偉大な強みである」としている。

 本書では、オバマ政権における親中路線と対中強硬路線との対立が描かれているが、歴代政権を振り返っても、アメリカの対中政策は1つの政権内で融和路線から強硬路線へ、そしてその逆へと大きく振れることも珍しくない。トランプ政権もまた融和一辺倒でもなければ強硬一辺倒でもないであろうが、戦後アメリカを中心に築かれてきたリベラルな国際秩序に対して中国が挑戦し、その一端が東アジアの海において表れているという現実を前にして、海洋国家アメリカが進むべき方向性はおのずと明らかである。

 第二に、海洋安全保障のための日本の能力強化は必須である。それは、日米同盟強化の前提とも言える重要事項である。日本周辺の海空域の安全確保、島嶼部の防衛、海上交通の安全確保などのために、防衛力を総合的に充実させていくことは急務である。

 また、海洋安全保障の強化のためには、防衛力だけではなく、海上保安庁の能力と態勢、そして自衛隊と海上保安庁の連携のさらなる強化も必要である。日本の海上保安庁は海における警察機関であり、軍事的な役割を果たす組織ではない。しかしながら、中国における海上保安庁に相当する機関、海警局は、海における警察機関であるだけでなく、中国人民解放軍の海軍を補完する準軍隊であると考えられている。

 現在、中国は、海警局の船舶の勢力増強を急速に進めている。大型の巡視船の数でみると、数年前までは海上保安庁のほうがまさっていたが、今では海警局のほうがはるかに多く、今後もその差は開いていくとみられている。

 仮に東シナ海において、海警局の船舶が日本の領海に侵入してきた場合、日本側はまず海上保安庁が対応する。しかし、中国側は海警局の船舶のままでも、警察機関としての武器使用権限を超えて、軍隊としての武力行使ができてしまう。もちろん違法に侵入してきた船舶による勝手な武力行使が許されるわけはない。だが、それが現実に起こったとき、武力行使に対応するためには、日本は海上保安庁の能力や権限がこのままだと、早い段階で自衛隊を出動させなければならなくなる。すると、日本が先に軍事組織を投入して、緊張のレベルを上げた形になってしまう。少なくとも、そのような外形を作り出してしまうのだ。

 こうしたことを防ぐためにも、海上保安庁の強化は必要である。海上保安庁の機能、性格、権限について、中国の海洋進出という新たな現実を目の前にしている今、抜本的に考え直す必要があるのではないか。

◆米中間には軍トップが話し合う正式なチャンネルがある

 第三に、日中間の危機管理のチャンネルを確立しなければならない。本書では、アメリカ海軍のグリーナート大将と中国海軍の呉勝利上将(大将)がビデオ会議で直接対話する場面が出てくるが、これは彼らが個人的に特別な関係を築いているということではない。米中間にはそうした海軍のトップ同士が話し合う正式なチャンネルがあるということなのだ。一方、残念ながら、日中間でそうしたパイプが構築できているという話を耳にしたことはない。中国との間で偶発的に不測の事態が生じてしまったときに、そのようなチャンネルがあるかないかで、その後の事態の行方は大きく変わってくるはずだ。

 最後に、現在日本のみならず世界の大きな注目の的になっている北朝鮮の核・ミサイル問題についても言及しておきたい。海洋の自由を阻害する中国の動きも、北朝鮮の核・ミサイル開発も、ともに確立した国際秩序に対する重大な挑戦である。どちらも北東アジアだけの問題ではなく、世界全体の問題である。また、どちらかの問題の解決のために他方の問題の解決が犠牲になってよいというようなものでもない。とはいえ、いずれの課題についても、短期的な解決策があるとは思えない。どちらもきわめて困難な問題である。

 北朝鮮は、1991年の朝鮮半島非核化に関する南北合意に違反し、1994年の米朝枠組み合意を破り、2005年の六者会合の共同声明に違背し、国際社会の強い反対にもかかわらず、一貫して核兵器の開発を進めるとともに、弾道ミサイルの開発も進めてきた。トランプ政権は、これまでの政権にはない強い態度でこの問題に対処しようとしている。

 しかしながら、先述したように、これは北朝鮮と国際社会全体との間の問題であり、北朝鮮に対してさらに圧力をかけていくためには、中国の役割も不可欠である。北朝鮮が核弾頭を備えたミサイルを保有することになれば、それは中国にとっても脅威となる。そのことは中国も認識しているはずだ。しかし中国は、強い圧力をかけた結果、朝鮮半島において混乱が起こり、難民が中朝国境を越えて自国に押し寄せてくることを強く警戒している。また、アメリカの影響力とアメリカ軍のプレゼンスが朝鮮半島全体に及ぶことについても強く警戒している。そしてなにより、中国と北朝鮮は今も同盟関係にあるのだ。

 2017年9月11日の国連安保理決議第2375号の成立に至る過程でも、制裁の度合いを薄めたのは中国である。中国は「圧力」より「対話」に重点を置いており、日本やアメリカとの立場の違いは明らかである。ここでも国際社会は、中国との困難な対応を迫られているのである。

              ◇     ◇     ◇

徳地秀士(とくち・ひでし)静岡県出身。1979年(昭54年)東大法学部を卒業後、防衛庁入庁。経理装備局長や防衛政策局長を歴任後、2014年7月、防衛省に新設された次官級の初代防衛審議官に就任。政策研究大学院大学シニア・フェロー。


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