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日台友好の原点を探しに。一青妙さんが訪れた「花蓮」に残る日本人移民村

トリップエディターへの寄稿第4回目は花蓮・移民村です。ちょうど昨日18日に、吉野村に「吉安好客芸術村」がオープンしたばかりです。よろしければご一読ください!                         (一青妙「妙的日記」:2018年5月19日)

日台友好の原点を探しに。一青妙さんが訪れた「花蓮」に残る日本人移民村 【トリップエディター:2018年5月19日】https://tripeditor.com/337785

 2018年2月に大規模な地震に見舞われた台湾東部最大の街・花蓮。この街の魅力を女優・エッセイストの一青妙(ひととたえ)さんが紹介する当シリーズの4回目は、かつてこの地に暮らしていた日本人移民村の跡や、彼らが信仰のために建てた神社など、台湾の地に生きた日本人たちの息吹が感じられる歴史的遺構を巡ります。

◆日本と台湾の歴史に思いを馳せる移民村

 かつて、花蓮には多くの日本人が暮らしていた。1900年から1920年ころにかけてのことだ。彼らは農業移民として、台湾東部の開墾を目指し、日本の四国や北陸、東北地方や北海道と各地から太平洋を渡ってきた。

 移民たちは、亜熱帯や熱帯気候に属する台湾で、慣れない気候条件や疫病が流行する厳しい条件に耐えながら、荒れ果てた地を耕しながら、家を建て、家族とともに暮らした。道路が整備され、集会所や学校、病院もでき、日本人による、日本人が生活を営む村がいくつもあった。

 ほとんどの村には、信仰の対象となる神社が建立された。子供達の遊び場や、夏祭りの会場となり、村の人々が集まる中心的な役割を果たしてきた。

 自然に恵まれている花蓮。レジャーを楽しむために訪れる人が多いが、日本人であるなら、花蓮に残された、日本と台湾に関連した歴史的遺構をたどる旅に出かけてみれば、また違う花蓮が見えてくる。

 キーワードは「鳥居」と「神社」だ。

 市内からいちばん近い移民村は、現在の吉安にできた吉野村だった。四国の徳島県吉野河流域から入植したため、吉野村と名付けられ、9戸20人の移民からスタートした。村のシンボルは真言宗高野派の寺院「吉野布教所」だ。現在は「吉安慶修院」となっている。

 大正13年、吉野村で生まれ育った山口政治(やまぐち・まさじ)さんの著書『知られざる東台湾』(展転社)には、吉野村で育った人の思い出が多く紹介されており、そのなかには「オラが昔の ふるさと音頭」という開拓民の作った詩がある。

 始めは道も家もなく  雑木柱のカヤ建てて  ランプかこみて夕餉とる 蕃人の出草におびえつつ  笑も消えし吉野村

 住みて間もなく大しけに  家みな倒れ野宿して  医者も薬も糧もなく 病人ふえて世を去りし  もの多かりき吉野村

 蕃害マラリア恙虫  風土の変わるあまつちに  いばらの道をふみ越えて あれ野拓くや三十年  楽土となせし吉野村

 光りと水にめぐまれし  作りだしけり吉野村  タバコに甘蔗アンコ芋 村特産とたたえられ  日本の宝庫吉野村

 苦労をしながらも、たくましく生きてきた日本人たちの心の声が聞こえてくるようだ。

◆吉安慶修院に八十八体の仏像が安置されてるワケ

 吉安慶修院の御本尊は弘法大使。背後には、弘法大使が開いた四国八十八ヶ所の霊場を表す八十八体の仏像がある。日本から離れた地でも、八十八箇所の霊場をお参りして巡ったのと同等のご利益を得られるように並べられたのだろう。吉野村があった時代は、村人たちの心の拠り所となっていたに違いない。

 周辺には、開村記念碑や、農作物の灌漑用水路として作られた吉野圳、末代の村長がかつて住んでいた日本式家屋なども残されている。5月18日に、かつての神社跡地が、「吉安好客芸術村」としてオープンしたばかりだ。日本統治時代、移民村周辺に多くの客家人が西部から移り住んだ歴史の一端をうかがい知ることができる。

 吉野村ができた後は、花蓮を南下するように、次々と日本人移民村ができた。

 花蓮市の南を流れる木瓜渓というフルーティーな名前の渓流を渡った先に寿豊というところがある。この寿豊を車で走っていると鳥居を見つけた。鳥居の上には現在の名称である「碧蓮寺」の文字があり、前後には、参道と思われるまっすぐな道が貫いている。境内には、台湾の街角でよくみかける色鮮やかな廟と日本のお寺に並ぶ石灯籠。日台の宗教文化が混在している。

 鳥居が建てられている一帯は、日本統治時代、「豊田村」と呼ばれていた移民村だ。周囲をめぐると、警察の派出所や、小学校、墓石など、かつて日本人村であった面影がそこかしこに点在している。

 さらに南の寿豊渓を越えた鳳林内には、豊田村の鳥居よりもかなり大きく、真新しい鳥居がある。日本統治時代、「林田村」と呼ばれた移民村にあった鳥居を再建したものだ。

 周辺には、やはり日本統治時代に使われてきた日本家屋がポツポツと残っている。花蓮の最南にある玉里にも神社の跡地があり、地元の人たちの努力で整備され、公園のようになっている。

 日本人が作り上げた移民村の大体は、道路は碁盤の目状に敷設され、整然とした印象を持つ。律儀な日本人らしい一面を感じる。

◆台湾の地に生きた日本人が涙をこらえて歌った「故郷」

 私の父は1928年に生まれたので、終戦までは日本人として生きてきた台湾人だ。10歳から日本へ内地留学し、日本人の級友たちに囲まれて勉強に勤しんだ。一時台湾に引き揚げたが、その後も日本に戻り、生涯の大半を日本で過ごした。

 すでに亡くなっているので、本人に聞くことは叶わないが、父のアイデンティティは日本人であり、故郷は日本ではなかったのかと私は考えている。

 一方、父とは逆に、台湾で育った日本人もいる。2016年に日本でも公開された『湾生回家』という映画を見て、父とは逆に、日本統治時代の台湾で生まれ、暮らしてきた日本人も大勢いることを知った。「湾生」とは、日本統治下の台湾で生まれた育った日本人たちの呼称だ。

 かつて花蓮で暮らしていた湾生たちが多く登場し、幼いころの記憶をたどっていくルーツ探しをテーマにしているドキュメンタリー映画は、9割以上が日本語ということもあって、台湾映画であることを忘れて見入った。

 湾生たちの言葉には説得力があった。一緒に遊んだ友だちや、慣れ親しんだ家を捨て、台湾から日本へ引き揚げるときの湾生たちの思いはどれほど辛かったのか。通っていた学校、見てきた風景、もぎ取ったフルーツの味……。

 再び訪れた花蓮は、記憶のなかに残っている花蓮とは様変わりしてしまい、会いたかった旧友はすでに亡くなっていた。

「うさぎ追いし かの山 こぶな釣りし かの川」

 映画のスクリーンから、歌声が聞こえてきた。かつて花蓮で、台湾の人たちと一緒に歌った歌を、涙をこらえながら湾生が口ずさむ。

 花蓮に暮らしていた日本人は、花蓮が故郷であり、台湾が忘れられない地なのだ。彼らにとってアイデンティティのある部分は台湾で過ごした少年時代の記憶と分かちがたく結びついている。

 最初はあるいは招かざる客だったかもしれない日本人。しかし、いつしか台湾の大地に生きる民となっていった。

 「日本人と台湾人は共生していました。だから絆が深いのです」以前知り合いが私に語ったこの言葉が、しみじみ思い出される。

 花蓮に出かけ、そうした歴史に思いをめぐらしてみたい。

観光地情報吉安慶修院花蓮県吉安?吉安村中興路345-1号http://www.yoshino793.com.tw/


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