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大阪駐在の台湾外交官の死から、日本人が学ぶべきこと 栖来ひかり(台湾在住ライター)

昨日発行の本誌で、台北駐大阪経済文化弁事処の蘇啓誠・処長を自死に追い込んだフェイクニュースがなぜ生まれたのか、東洋経済新報記者の劉彦甫氏の記事がもっとも詳しく伝え、真相に迫っているのではないかとご紹介した。

 記事は2本あり、9月19日の「大阪駐在の台湾外交官はなぜ死を選んだのか」と、21日の「『中国人優遇』の偽ニュースはなぜ生まれたか」だ。

・東洋経済ONLINE:大阪駐在の台湾外交官はなぜ死を選んだのか【9月19日】 https://toyokeizai.net/articles/-/238262

・東洋経済ONLINE:「中国人優遇」の偽ニュースはなぜ生まれたか【9月21日】 https://toyokeizai.net/articles/-/238795

 本誌でもたびたびご紹介している台湾在住ライターの栖来(すみき)ひかりさんは、亡くなった蘇啓誠処長とフェイスブックでつながっていて、その死に衝撃を受けた一人だ。

 栖来さんはこの死を無駄にしたくないという思いから、台湾メディアに対してフェイクニュースが生まれないよう反省と問題解決を訴えるとともに、「日本人はこの事件について、なんら責任はないといえるのだろうか?」と問うている。

 エッ、なぜ日本人に責任が……と思いつつ読んでゆくと、例の「慰安婦像に対して、蹴るようなポーズをした日本人男性のニュース」を取り上げ、「関西空港での対応をめぐって蔡政権が台湾で大きな批判を浴びている最中で起こった醜聞であり、蔡政権叩きをさらに激化させたことは言うまでもない」と指摘する。

 慰安婦問題とこの日本人の行為は切り離されて論じられなければならないことは言うまでもないが、この行為の非は責められて当然だろう。なぜなら、日台関係に亀裂を入れ、蔡英文政権のみならず、日本や日本人を大切に思っている台湾の人々を困惑と窮地に追い込んだ、まったく愚かな行為だったからだ。

 そこで栖来さんは「日頃から台湾への認識や理解を深める事、それが今回の痛ましい出来事から日本人が学び得ることではないだろうか」と苦言を呈している。

 蘇処長の自死から「日本人の責任」という観点を引き出した記事は、寡聞にして知らない。日台関係を深めてゆくうえでとても大事な観点だ。日本人が二度とこのような品位に悖(もと)る恥ずかしい行為を冒さないことを期し、自戒を込め、下記にその全文を紹介したい。


大阪駐在の台湾外交官の死から、日本人が学ぶべきこと 「政権攻撃の口実」に利用されている日本栖来ひかり (台湾在住ライター)【WEDGE infinity「栖来ひかりが綴る『日本人に伝えたい台湾のリアル』」:2018年9月25日】http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14033

 9月14日、台北駐大阪経済文化弁事処の蘇啓誠(そ けいせい)代表が大阪府内で亡くなった。自殺だった。台風21号によって封鎖された関西空港での対応をめぐり、台湾で議論が巻き起こったことに責任を感じての事だったと報道されている。

 筆者自身、直接お会いしたことはなかったがフェイスブックで繋がっており、穏やかで実直なお人柄が印象に残っていた。筆者のまわりには蘇氏と親しかった友人も多く、報道のあとに沢山の方がその死を悼み、蘇氏の選択を嘆くのを目の当たりにして、長いあいだ日台を繋いで来られた素晴らしい方を私達は永遠に失ったのだと感じた。

 蘇氏を自殺まで追い詰めたのがSNSを発端とするフェイクニュースであることは、『東洋経済オンライン』のこちらの記事に詳しく出ているので拙稿での説明は省くが、フェイクニュースの出所は中国で、台湾社会を混乱させるための工作の一環だったという指摘もある。

 蘇啓誠氏の死を無駄にしないためにも、今回の反省をきかっけとして、台湾社会のひずみともいえるフェイクニュースの問題に台湾の方々がきちんと向き合っていくことを願ってやまないが、その一方で日本人はこの事件について、なんら責任はないといえるのだろうか?

◆「統一地方選」を目前に情報戦が過熱する台湾

 ひとりの人を死に追いやるほどフェイクニュースが過熱した原因に、台湾がこの11月に統一地方選を控えていることが挙げられる。この選挙では、上は県市長・県市議員から下は一番小さな自治単位である村長・里長までが選出されるが、この結果が2020年の総統選挙に大きな影響を及ぼすだけに、どの陣営にとっても重みのある選挙であり、メディアやSNSでの情報合戦も日々激しさを増し、フェイクニュースの温床ともなっている。

 台湾の選挙では、思いもつかないような予想外の出来事が次々に起こり、それが戦局に大きな影響を与える。2004年の総統選では再選を目指す陳水扁氏が投票日前日に狙撃されたし、2010年には元副総統・連戦の息子で政治家の連勝文が、統一地方選の応援演説中に銃撃をうけた。2016年の総統選前には、韓国の人気アイドルグループTWICEの台湾人メンバー・ツウィ(周子瑜)が韓国のテレビ番組のなかで中華民国国旗を振ったことから「一つの中国」を主張する中国のネットで大炎上し、謝罪に追い込まれた。これが結果的には、台湾の主権を掲げる現総統・蔡英文の勝利に大きな追い風となったと言われている。

◆「無党派層の取り込み」で揺さぶりをかける中国

 しかし、蔡英文が総統に就任して2年経った現在、蔡政権の支持率は下がる一方だ。かといって野党・国民党の支持率が上がっているわけでもない。そんな状況でとりわけ目立つのが「無党派層」に訴える選挙戦略だ。従来の台湾政治イデオロギーは、大きく分ければ最大野党・中国国民党を中心とする親中派(統一を指向)と、与党・民主進歩党に代表される台湾本土派(独立を指向)があり、前者を「藍色」、後者を「緑色」というイメージカラーで呼び分けるが、今回の選挙の大きな鍵を握るのが、「白色」をイメージカラーとする無党派層だ。

 例えば、これまで台湾の選挙ポスターのデザインといえば、藍か緑か一見して判るものが殆どだった。しかし今回は、どの陣営の候補者かまったく推測できないもの、マニフェストの書かれていないものが目立ち、浮動票を取り込むには政党色を出すと損だとの心理が透けてみえる。若くてルックスの良い候補者が多いのも印象的だ。

 無党派層=白色陣営とは、つまり「自分は台湾人である」(中国人ではない)という自認(台湾アイデンティティ)はあるが、現状維持がもっとも適当であると考える人たちだ。統一したいとは思わないが、ことさら台湾独立を主張して中国やアメリカを刺激したくない ――現台北市長の柯文哲は、そうした無党派層の圧倒的な支持を得ており、次の台北市長選においても再選される可能性が高く、2020年の総統選への出馬も視野にあると言われる。

 また、台湾との統一に向けて圧力を強めている中国政府も、国内で力を失った国民党に見切りをつけ、柯文哲を持ち上げ始めた感がある。このことは中国寄りメディアの『中国時報』やテレビ局『TVBS』が柯文哲について好意的な報道をしていることにも表れており、戦局は「藍白 VS 緑」という様相を色濃くしている。これについて台湾政治に詳しい東京外国語大学の小笠原欣幸准教授は、「中国が期待しているのは,柯の当選によって台湾の政党政治がガタガタになり,台湾の民主主義自体が崩れていく局面であろう」と指摘している。

◆「政権攻撃の口実」に利用されている日本

 両者それぞれが相手の粗さがしをしては、新聞やテレビ・ネットの各メディア上で大袈裟にスキャンダラスに報道する ――こうした攻防が日夜繰り広げられる台湾社会の在り方と、大阪駐在の台湾外交官だった蘇啓誠氏が自殺にまで追い込まれたことの関係は浅からぬ。なぜなら、緑色陣営を攻撃する口実を与える大きな要素のひとつが「日本」だからだ。日本と台湾のあいだにいったん問題が生じれば、途端に蔡政権は「日本の犬」「皇民」(緑陣営を揶揄する言葉、戦前に台湾で行われた皇民政策から取られた)と罵られ、政争のタネにされてしまう。

 例えば、先日の台南の国民党台南支部の敷地内に設置された慰安婦像に対して、蹴るようなポーズをした日本人男性のニュースは台湾で大きな騒ぎを引き起こし、蔡政権は強烈な批判を浴びた。台湾での慰安婦問題は、戦後に日本人の財産を接収し党産とした国民党によって意図的にうやむやにされてきた経緯もあるが、政治イデオロギーに関わらず多くの台湾人が、最終的に日本政府が向き合うべき未解決の問題と考えており、当事者の慰安婦の方々に同情を寄せてもいる。

 よって件の日本人男性の行為のために、無党派層ふくめ多くの台湾の人々が侮辱を受けたように感じたのだが、蔡政権の反応が鈍かったため、藍白陣営への戦局利用に上手く利用された形となった。この一人の「日本人」による愚かしい行為が果たして、関西空港をめぐるフェイクニュースに苦しめられていた蘇啓誠氏への更なるストレスとなったかどうかは、今となっては知る由もない。しかし少なくとも、関西空港での対応をめぐって蔡政権が台湾で大きな批判を浴びている最中で起こった醜聞であり、蔡政権叩きをさらに激化させたことは言うまでもない。

◆「親日的な部分」だけを拡大して語ることなかれ

 1957年台湾嘉義市生まれの蘇啓誠氏は、大阪大学大学院で博士号を取得し、官僚として30年近くに渡って日台のために心を尽くした優れた外交官だった。しかし、大使館にあたる大阪の領事館が「台北駐大阪経済文化弁事処」という名前である事からもわかるように、台湾と日本は正式な国交がない。また中国の「一つの中国」という主張を「尊重する」立場の日本政府との外交においては、これまでもさぞかし難しい局面が数多あったと察する。

 世界のなかで国としての立場が定まらない台湾。充分な賠償や補償を受けていない台湾人従軍慰安婦の方々や、台湾籍元日本兵・軍属の方々など、くすぶり続けるわだかまりも少なくない。何故なら、戦前には台湾を領土とし、敗戦と共に放り出し、1972年に再び断交したのは他でもない日本だからである。台湾の未来を決めるのが台湾人自身なのは勿論だが、日本もまた、台湾の行く末に幾許かの責任を負っている。さらにいえば、東アジアにおける安全保障の観点でも、民主主義的な価値観を共有する台湾の主権を応援することは、日本にとっても重要な事柄といえる。

 災害が多く、旅行者としても多くの台湾人を受け入れている日本では、いつまた先日の関西空港のような事があるかわからない。何かしら問題が起こった時にすぐさま日台の連携を計り、台湾の状況に心を寄せることが出来るよう、日頃から台湾への認識や理解を深める事、それが今回の痛ましい出来事から日本人が学び得ることではないだろうか。

 「親日」的な部分のみを拡大して語るのではなく、未来的な関係を日台が築いていくのを願うとともに、お亡くなりになった蘇啓誠さんの魂が安らかならんことを、心よりお祈り申し上げます。合掌。

              ◇     ◇     ◇

栖来ひかり(すみき・ひかり)台湾在住ライター京都市立芸術大学美術学部卒。2006年より台湾在住。日本の各媒体に台湾事情を寄稿している。著書に『在台灣尋找Y字路/台湾、Y字路さがし』(2017年、玉山社)、『山口,西京都的古城之美』(2018年、幸福文化)がある。 個人ブログ:『台北歳時記〜taipei story』


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