台湾美術 邦人画家の献身  森 美根子(台湾美術研究家)

台湾美術研究家の森美根子(もり・みねこ)さんは2010年、『台湾を描いた画家たち─日本統治時代 画人列伝』(産経新聞出版)を出版し、石川欽一郎(いしかわ・きんいちろう)、塩月桃甫(しおづき・とうほ)、立石鐵臣(たていし・てつおみ)の3人の日本人画家とともに、台湾絵画史に名を留める睨蒋懐、黄土水、陳澄波など台湾画壇第一世代の18人の画家を紹介した。

 「台湾美術啓蒙の父」と言われる石川欽一郎以外は紹介されることの少ない中、塩月桃甫と立石鐵臣を入れ、台湾美術界で活躍してきた台湾人画家たちの業績をまとめ、日本と台湾が美術を介して密接な交流があったことを世に問うた功績は大きい。

 また、本誌でも紹介したように、昨年12月には『語られなかった日本人画家たちの真実』(振学出版)を上梓し、50年におよぶ台湾近代美術の歩みを著している。台湾近代美術は、石川欽一郎をはじめ塩月桃甫、郷原古統(ごうばら・ことう)、木下静涯(きのした・せいがい)、立石鐵臣など日本人画家の関与なくしては形成しなかったと言われ、本書は台湾で活躍した日本人画家たちの軌跡を留める貴重な作品だ。

 このほど『語られなかった日本人画家たちの真実』の出版に縁し「台湾美術 邦人画家の献身」と題して日本経済新聞に寄稿している。下記にご紹介したい。

              ◇     ◇     ◇

森美根子(もり・みねこ)台湾美術研究家。東京都生まれ。1996年、台北県立文化センター開催「民俗風情―立石鐵臣回顧展」の日本側責任者を務めて以降、台湾人画家を紹介する展覧会を多数企画。また「台湾美術 現代の旗手5人展」「台湾の心・台湾の情―廖修平・江明賢二人展」(松濤美術館)「いま、台湾 台灣美術院の作家たち展」(松濤美術館)「立石鐵臣 麗しき故郷『台湾』に捧ぐ」(府中市美術館)などの展覧会に論文を発表。その間、国立台湾師範大学、国立台湾藝術大学、北京中国美術館、拓殖大学講座「世界の中の日本」、台湾政府文化部講座「台湾文化光点計画」などで講演。主な著書に『台湾を描いた画家たち─日本統治時代 画人列伝』『語られなかった日本人画家たちの真実』など。

—————————————————————————————–台湾美術 邦人画家の献身 現地の研究者と交流深め集めた統治下の資料 森美根子 【日本経済新聞:2018年1月23日】https://www.nikkei.com/article/DGXKZO25980520S8A120C1BC8000/

 1895年、台湾は日清戦争後の下関条約で日本に割譲された。それから1945年まで続いた日本統治時代、時代や民族の壁を越えて同地の美の創造に尽くした日本人画家がいた。彼らと台湾人画家との交流や葛藤を中心に私は台湾美術の発展について調べている。

◆3人のキーパーソン

 台湾美術を語る上で欠かせない3人の日本人画家が、石川欽一郎(1871〜1945年)、塩月桃甫(1886〜1954年)、立石鐵臣(05〜80年)だ。

 石川は台湾総督府陸軍部の通訳官として07年に台北に赴任し、現地に洋画の美術教育をもたらした。21年に図画教師として同地に渡った塩月は、台湾美術展覧会(台展)の創設に関わり長く審査員を務めた。台湾生まれの立石は現地の美術展で活躍し、当時在野で最大の美術団体「台陽美術協会」の創設に日本人として唯一関わった。

 私が特に強い思い入れを持って調べてきたのが塩月と立石の2人だ。

◆台展の地位確立に奔走

 塩月は台湾に25年暮らし、旧制台北高校で美術を教えた。原住民の芸術を愛し彼らをテーマにした秀作を発表。特色ある南方芸術を発展させることに意欲を燃やした。台展が日本のいかなる展覧会にも従属せず独自の地位を確立するよう尽くした。前衛美術を標榜する「独立美術」の台北巡回展を実現すべく、奔走したのも彼である。

 一時は「台湾美術界のドン」と言われるほど影響力を誇った。だが、日本に引き揚げてからは中央画壇に登場することなく、地方の芸術振興に尽くしつつ世を去った。75年には台湾の美術家が台湾人に偏見を持つ傲慢な「植民教育家」として糾弾。塩月の教え子と激しい論争を繰り広げた。

 今も「台湾美術啓もうの父」と慕われる石川とは対照的だが、私は塩月も純粋な心で台湾美術の発展を目指したと考えている。

 立石は若い頃に岸田劉生や梅原龍三郎に師事し、国画会で2年連続で国画奨学賞に輝いた。台湾に戻ってからは皇民化運動が激しさを増す中、台湾の民間習俗・風俗を守ろうと日本人が創刊した雑誌「民俗台湾」の編集に携わった。酷暑をいとわず連日、古い街並みや人々の暮らしをスケッチして木版画「台湾民俗図絵」を発表した。

◆愛情伝わる木版画

 台湾人への差別が当たり前だった当時、立石は「清らかに洗はれた眼をもつて、台湾の風土に愛情の誠をささげ、そこから美の軸に迫る探究の熱意を傾けるのでなければならない」と述べている。木版画からは現地の人々への愛情が伝わる。

 私は96年、台北県立文化センターで催された立石の個展に関わり、立石が引き揚げ時に現地に油彩画の大半を残してきたことを知った。在りかを確認しようと調べ始めたのが台湾美術を研究するきっかけになった。

 当時、日本では台湾の近代美術に関する研究はほとんどなかった。調査のため頻繁に現地を訪ねてはトランクに大量の美術書を詰めて帰国した。

 投宿先のホテルには現地の美術研究者らが集まり、必死に作品を探してくださった。その中にはすでに他界されたが、40年に東京美術学校(現東京芸術大学)に入学した画家の廖徳政氏、新聞記者から画家に転じた鄭世[王番]氏、日本大学歯学部を卒業して作家になった王昶雄氏らがいる。

 多くの研究者が私の調査を熱心に支援してくれたことにいたく感動した。彼らの支えがなければ、20年以上も研究を続けてこられなかった。

 日本では台湾協会(東京・新宿)が所蔵する「台湾日日新報」などの新聞をマイクロフィルムで読む日々が続いた。フィルムの画面は暗く、最大に拡大しても虫眼鏡を使わなければ活字を読めない。骨の折れる作業だったが、記事から統治時代の情景がよみがえってくる感覚を味わうと、時間がたつのを忘れた。

 一昨年、東京・府中市美術館の「立石鐵臣展」に関わらせていただいた。近年、台湾美術の歴史や作品への注目度は増している。このほど「語られなかった日本人画家たちの真実」(振学出版)を刊行した。今後も統治下という複雑な状況下でも台湾の自然風土をこよなく愛し、美術教育や芸術文化の発展に尽くした人々の業績を広く伝えていきたい。

                            (もり・みねこ=台湾美術研究家)


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