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もっともルールを守らない中国がルール遵守を叫ぶ矛盾  黄 文雄(文明史家)

【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」第262号:2018年11月21日】http://www.mag2.com/m/0001617134.html*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部で付したことをお断りします。

 みなさんこんにちは、黄文雄です。 日産のカルロス・ゴーン会長が逮捕されました。経営危機に陥った日産を立て直したゴーン氏ですが、日本の大企業が海外の企業の傘下に入り、外国人が経営トップになったということで、まさにグローバリズムの象徴のような人でした。そのゴーン氏が逮捕されるということは、ある意味で、グローバリズムの終わりを意味しているのかもしれません。

 イギリスのブレグジットや米中貿易戦争も、グローバリズムが終焉に向かっていることを示しています。先日のAPECでは、米中対立が激化したため、APEC史上初めて共同宣言が出されませんでした。しかもグローバリズムを守ろうとする中国側にしても、自分のエゴを通そうとする振る舞いです。

 今週のメルマガでは、以上の点について解説しました。                ◇     ◇     ◇

◆中国側代表団がAPECでまたもや非常識な振舞い

 21の国と地域が参加したAPECが、11月18日に閉幕しましたが、APEC史上で初めて首脳宣言の採択が見送られるという、異例の事態になりました。米中の対立で宣言をまとめられなかったことが原因です。

 新聞によれば、アメリカが宣言の原案にあった「保護主義と対抗する」といった文言に反発する一方で、中国側が「一国主義と対抗する」という、トランプ政権を意識したような文言を入れるように強く要求、その一方でアメリカ側は中国を念頭に、不公正な貿易慣行の撤廃を求める表現を盛り込むように主張したそうです。

 米中の主張が真っ向から衝突するかたちで、そのために宣言をまとめることが不可能だったというわけですが、その過程では、中国側の代表団がパプアニューギニアの外務貿易相との面会を求め、これを断られると、執務室に強引に入ろうとしたため、警察官が配置されたことが発覚しました。

 要するに、議長国であるパプアニューギニアに対して、中国は直談判して圧力をかけようとしたわけです。中国側はこのような行動などしていないと否定していますが、当のパプアニューギニア政府当局が告発しています。

 このAPECのスピーチで、「意見の相違は話し合いを通じて解決されるべきだ。排他的ブロックを形成したり、一国の意向を他の国に押し付けるような試みは受け入れられない。冷戦であれ、武力に訴える戦争であれ、貿易戦争であれ、対立がいかなる勝者も生まないことを歴史は示している」と語ったそうですが、まさに中国側はパプアニューギニアに対して、一国の意向を押し付けようとしたわけです。

 言うこととやることが違うのは、中国の常です。中国が「こうすべき」という場合、それは他者に対してだけであり、自分はその範囲外だという認識です。

 中国はパプアニューギニアを含めて、太平洋の諸島への投資を加速させています。それだけに、「なんでも自分たちの言うとおりになる」と思っているのでしょうが、さすがに今回は通りませんでした。

◆ペンス副大統領も「米国のパートナーを借金で溺死させない」と中国を非難

 中国はグローバリズムの恩恵を得て、経済成長を果たしました。それだけにグローバリズムを守りたいという思いがあるのでしょうが、しかし、中華思想が強いため、自己ルールを押し付けようというエゴが前面に出てきてしまうのです。そんな中国に自由貿易やグローバリズムを語る資格はないのです。

 習近平はAPECの開幕前に演説を行いましたが、そこでは、WTO主導のルールに基づく秩序維持を訴えています。しかし、これまで中国はつねにWTO違反を指摘されてきましたし、アメリカの通商代表部などはオバマ政権のときから「アメリカが中国のWTO加盟を支持したことは明らかに誤りだった」と言い続けています。

 中国による不公正な貿易慣習が批判するようになったのは、別にトランプ政権になってからではありません。

 日本にしても、2010年に発生した中国漁船の衝突事件をめぐって、中国側が日本への制裁措置としてレアアースの輸出を制限したということがありました。輸出入を経済と関係のない政治交渉の道具とすることはWTO違反であり、日本は欧米とともに中国を提訴して、そして勝利しています。

 現在、日米欧はWTOに対して、通知なしに補助金交付などで自国産業への優遇措置を続けた場合、ルール違反として制裁を課すという、WTO改革案を提示し、これに対して中国が反発しています。まさに、補助金によって自国産業を保護し、それによって国際市場において中国製品のダンピングを行っているのが中国だからです。

 国がバックについて補助金が出るなら、国際市場において赤字価格で中国製品を売って市場を奪うことも簡単にできてしまいます。日本も欧米も、これを不公正な経済慣行だといって批判しているわけです。

 他国のインフラ建設に対する入札でも、中国は同様のことをやっています。他国より破格に安い建設費を提示して落札しているわけです。しかし、そのような価格で建設できるわけもなく、あとから工事費のアップを要求したり、あるいは途中で放棄するといった事案が増えているわけです。

 首尾よく完成したところで、工事費が増大し、さらに中国の高利な融資により、負債を返却できなくなった他国が、そのインフラ施設の利用権を中国に売り渡さざるをえなくなるということも相次いでいます。

 このメルマガでも何度か紹介しましたが、スリランカのハンバントタ港は中国に99年も貸与されることになりましたし、パキスタンやマレーシアなどでは、同様に借金まみれになってインフラの支配権を中国に握られる懸念から、建設が延期、あるいは中止になるケースが次々と出てきています。

 APECでは、アメリカの代表であるペンス副大統領が中国を念頭に、「米国のパートナーを借金で溺死させない」「国の主権を損なう危険な対外債務を負わないように」と各国首脳に呼び掛けました。アメリカの報道では、「一帯一路」の参加68カ国のうち、少なくとも13カ国が債務危機に陥っているといいます。

 中国は決して国際ルールなど守る国ではありません。だいたい、南シナ海に関して、「中国が歴史的に管理してきた」という中国側の主張に「根拠なし」としたハーグ仲裁裁判所の判決について、中国政府は「紙くず同然の判決」などと暴言を投げ、従わない姿勢を示したことは記憶に新しいところです。

◆来年の大阪G20で中国は日本と欧米の分断工作を仕掛ける!?

 中国には「中華思想」という言葉はありません。日本に中国での日本人蔑視の「倭奴」「東洋鬼」という言葉がないのと同じです。しかし、日本では中国人の自己中心主義を「中華思想」と呼び、西洋では「sinocentrizm」と呼んでいます。

 「華」とは、他に比べて優れているという優越意識を示している言葉ですが、まったく根拠がないものです。このことについて中国文学の父である魯迅は、小説「阿Q正伝」において、劣等感の裏返しである「阿Q精神」と呼びました。

 私も学識専門家が集まるいろいろな国際会議に出た経験がありますが、たいてい中国人の代表が入ってくると、会議が混乱することが多いのです。というのも、自己主張が強く、自分の思い通りにならないと、絶対にゴネるからです。

 もちろんそこには、中国の内部事情もあります。中国側の代表者は中国共産党の幹部ですから、自分の主張が通らないと、党内で吊るし上げられ、失脚する恐れがあります。そのため一歩も譲らないという側面もあります。

 来年は日本の大阪においてG20が初めて開催されます。さすがに中国もパプアニューギニアに対して行ったような傍若無人な態度はできないはずですが、韓国と組んで徴用工問題や歴史問題を持ち出して、欧米との分断を図る可能性もあります。注意しておく必要があります。

◆パプアニューギニア軍楽隊の「ふるさと」演奏は一服の清涼剤

 話は違いますが、APECで各国首脳を出迎えたパプアニューギニアの軍楽隊は、日本が楽器を寄付し、自衛隊が約2年間かけて指導したものだそうです。安倍首相が到着したときには「ふるさと」が演奏されたそうです。

 パプアニューギニアはラバウルやポートもレスビーなど、日米が激しく戦った激戦地でもあります。

 いまだ帰国を果たせない日本兵の遺骨が多く残されており、現在もなお遺骨収集が行われていますが、遺骨収集の際に日本人の遺族や派遣団によってよく歌われ、ハーモニカで演奏されるのが、この「ふるさと」でもあります。

 旧日本軍の後継である自衛隊が指導したパプアニューギニアの軍楽隊が、日本の首相に対して英霊たちの遺骨収集のさいに歌われる「ふるさと」を演奏するというのも、パプアと日本との温かい心の交流を感じさせるもので、殺伐とした雰囲気のAPECにあって、一服の清涼剤のような話題でした。


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