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ここで興味深いのが調印式に参加した顔ぶれだ。先ず河南省からは省政府の副秘書長、商務庁長、外事僑務弁公室長、財務庁長、農業庁長、金融弁主任など。省経済政策の根幹を握る面々だ。一方のバンコク銀行はコーシット常務董事長(財務大臣、農業・組合大臣などを歴任)、チャトシリ(陳智深)董事総裁(チャトリ董事長長男)、副董事常務長、海外業務担当副総裁、顧問(元中国駐在タイ大使)と最高経営陣。それにしても驚かされるのは、コーシットといい元中国駐在タイ大使といい、バンコク銀行の人材確保への意欲だ。 調印祝賀セレモニーが終るや河南省の一行はアピシット(袁順利)首相を訪問し、同省とタイとの間の貿易・投資拡大につき会談。19日にはタイ最大の多国籍企業で積極的な中国投資で知られるCP(正大)集団との間で貿易と農業技術の発展を目指す合作に関する議定書に調印している。その後、一行はシンガポールに向かった。 それから10日ほどが過ぎた8月28日、バンコクの中心街にある超高級ホテルにおいて、タイで活動を続ける中台両岸の若手企業家の集まりである「両岸菁英会」が開かれている。今年(09)5月13日に結成された同会の集まりは、今回で5回目。呼びかけたのは香港に置かれた中国政府系企業の中で最大の華潤集団傘下で不動産開発を担当する長春置地有限公司の毛哲樵総経理と陳鋼副総経理の両首脳。 長春置地は華潤集団の潤沢な資金を背景に海外展開を積極的に進めているが、目下、最大の投資プロジェクトはバンコクの中心街の1つでアメリカ・英国の両大使館に近接する3万4千平米の開発である。総称はAll Season Place(漢字で「曼谷長春広場」と綴る)で、3棟の大規模オフィス・ビル、5つ星クラスのホテル、高級マンションにファッション・モールで構成されているようだ。すでにGE、マイクロソフト、BMWなどの世界ブランドの大企業の入居が決まっていると伝えられる。 ならば両岸菁英会は中国政府系企業がバンコク在住の台湾若手企業家を標的とした、形を変えた両岸統一へ向けての環境作りの一環と考えられないこともない。そこで8月28日の集まりへの主だった参加企業を見ておくと、台湾側では中華電信、中鼎工程、東陽、BenQ、 長栄航空、環亜工程、富邦保険など。中国側は中国建設、華潤置地、震雄鋼業、三一重工、中国中化、中興、泰中工業区、Websptなど。台湾側企業についていえることは、東陽、BenQ、長栄航空、富邦保険など一貫して中国市場に積極進出を進め経営規模の拡大を図ってきたということだ。台湾本社の意向があったと考えるのが常識というもの。 ――8月のバンコクを振り返ってみた。河南省政府一行、両岸菁英会、そして長春置地によるAll
Season Place。確かに華々しい活動というわけではない。だが、これらを結んでみると、“熱帯への進軍”を着実に進める中国の意図を感じないわけにはいかない。
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