|
||
愛国教育基地探訪(その9) ――熾烈な家電量販戦争・・・勝利バンザイ 数年来、全国各地で熾烈に展開されている家電量販戦争の戦況の推移を現地で体感するのも、やはり愛国教育基地探訪の隠れた楽しみの1つ。一昨年の西安では国美電器が市内目抜き通りの数カ所に大型店舗を出店し、同業他社を圧倒していた。昨年も国美優位は動かないようだったが、業界2位の蘇寧電器の健闘ぶりが目立った。国美は湖北省の武漢では市内一等地の巨大なショッピングモールに超大型の店舗を構えていた。だが湖南省に移ると事情は違った。長沙や衡陽などでは「五・一労働節(メーデー)」を当て込んでのド派手な広告で、蘇寧が国美を押しまくっていたように思えたのである。 そして今年。なにやら業界地図に一大異変が訪れていた。先ず天津。市内一等地に威容を誇る三利国際購物中心の正面玄関左隣にあるのは蘇寧の小洒落た店舗。一方の国美は看板すら見当たらない。次は唐山。市内繁華街を走ったが、目に入るのは蘇寧の看板のみ。目抜き通りを歩くと、四つ角にド派手なディスプレイを施した2階建て店舗を構えているのは蘇寧。見上げると巨大な看板には「購510元・送510元」の文字。メーデーの5月1日に因んで、家電で製品を510元分買ったら同額商品を進呈する、という趣向だ。ふと横を見ると、国美の小振りな看板が寂しげに。どうやら蘇寧と同じ建物ながら脇から入るようになっていて、店舗面積も一階の一部を占めているだけのようだ。ショーウインドー越しに中を覗くが商品が見あたらない。ふと目を移すと、「目下店内改装中」の張り紙だ。 改革・開放による経済成長は中国にも家電ブームを引き起こした。かくて全国で家電量販店が雨後の竹の子のように生まれる。続いて起こったのが業界の整理・統合・再編の波。売り場面積の拡大、中小都市部一等地への出店競争、同業他社に対するM&A,経営体力にモノをいわせた値引き合戦――「敵が進めば我は退き、敵が退いたら我は進む」との毛沢東式遊撃戦術とは反対に、敵が進もうが退こうが猛進あるのみの。同業他社に対し猛烈な殲滅戦を仕掛けて先行したのが、北京を拠点に全国展開に先んじた国美。これを猛追するのが蘇寧。かくて、ここ2,3年の量販業界は両社による全国規模でのチキンゲームの様相をみせはじめた。ここで蘇寧が毛沢東戦略に出る。持久・対峙・全面反攻である。 ところが、昨年11月に緊急事態発生。国美創業者で総帥の黄光裕が株価操作の疑いで公安によって身柄を拘束された。これまでも数々の疑惑を持たれたが、その都度、人脈と財力をテコにして容疑不十分で乗り切ってきた黄だが、今度ばかりは勝手が違った。というのも胡・温両首脳の厳命で中央政府の公安部長が動いたからである。胡・温政権は「99回言っても解らなかったら100回目にはぶちのめせ」との毛沢東の教えに忠実だった。かくて業界トップは、外国人向け中国語教師の前歴を持つ張近東が率いる蘇寧に交代となる。 5月8日、中国経済誌『新財富』は09年の企業家資産ランクを公表。張は174.3億元で前年6位から2位に躍進した。いま中国政府は内需拡大を経済成長の牽引車にしようと躍起だ。そこで家電価格の13%を政府補助金で補填するなど、200億元を投入して農村での家電普及に力を注ぐ。この政策が内需拡大に結びつくかは未知数だが、農村に家電製品が溢れれば家電量販王者に上り詰めた張近東の財布は肥大化必至。だが儲けすぎハシャギすぎは、“第2の黄”への道。というのも、出る杭は必ず打たれるからデス。(この項、続く) |