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『党政領導幹部公開選抜和競争上崗考試』(国家行政科学院出版社 2009年) 今も北京有数の繁華街である王府井の一等地に、共産党政権と共に歩む中華書店(王府井店)がある。そこは北京のランドマークであると同時に現代中国を代表する本屋さんだ。5月3日の夕刻、五一労働節(メーデー)連休を楽しむ人で溢れ返っていた王府井の歩行者天国を強引に横切って中華書店の店内へ。が、ここもヒト、ヒト、ヒト。というのも、中華書店創業60周年を記念する「八折(20%引き)セール」だったからだ。 一階売り場面積の半分ほどを占めているのは、夥しい量のカネ儲けのためのハウ・ツー書。徳川家康、豊臣秀吉、織田信長、武田信玄などの生き様を描いた本が大量に平積みされていたのには驚かされた。我が戦国武将の人生からもカネ儲けの秘訣を探ろうというのだろう。カネ儲けのためなら反日なんぞは棚上げ。使えるものは日本人だって使え、だろうか。ご都合主義の極み。カネ儲けに対する狂気にも似た貪欲さこそが彼らの真骨頂と納得しながら隣の書棚に目をやると、A4版大のテキスト状の本がズラリ。背表紙には「2009年最新版 標準模擬試巻」と書かれている。そのうちの1冊が、この本だ。 編著者の程連昌は元人事部常務副部長・国家行政学院副院長。表紙を開くと、皮肉なのかご愛嬌なのか。江沢民の筆になる「永做人民公僕(永遠に人民の公僕たれ)」の6文字。この本は党や政府の幹部登用試験受験者用のための“傾向と対策”の最新版だった。 編著者は「前言」の冒頭で「公開による党政指導幹部の選抜と昇級制度は幹部任用制度に関する改革の重要な成果であり、幹部人事制度改革の柱である。広範に人材を選抜し優秀な才能が頭角を現すことは人事任用上の不正を正すためには多大な意義を持つ」と力説した後、「本教材は信頼性高い内容により各省、自治区、直轄市の組織部門、人事部門から高い評価を受け、広範な受験生の支持をえている。出版以来、全国の20以上の市(区)が参考教材として指定した」と自画自賛・自己宣伝も忘れてはいない。商売、ショウバイ。 さて能書きはそれくらいにして、4択問題のいくつかを拾ってみよう。 A:社会主義道徳建設の核心は、①愛国主義、②集体主義、③社会主義、④為人民服務。 B:中国外交政策の基本目標は、①中国の国際的地位の向上、②世界平和の維持と人類共同の繁栄と発展の促進、③覇権主義と強権政治に反対、④人類解放の実現。 C:現下の世界の最重要社会問題は、①貧困、②失業、③人権、④格差。 D:建国初期、中国を後進農業国から先進工業国へ転換すべく戦略構想したのは、①鄧小平、②周恩来、③毛沢東、④劉少奇。 E:公文書を綴じる位置は、①左側、②右側、③真ん中上部、④左上部。 F:公文書の必要不可欠な部分は、①標記、②正文、③起案者、④公印・書名 もちろん4択問題といっても、ここに挙げたような単純素朴な問題ばかりではない。それに「党の執政能力強化の重要性につき述べよ」などといった小論文問題もあり、提示された公文書の誤りを訂正する極めて技術的な問題もある。問題群と正解・解説を読めば、共産党政権が掲げるタテマエをひたすら機械的に記憶しさえすれば合格可能なようだ。つまり科挙試験の現代版ということ。さて正解はA=④、B=②、C=③、D=③、E=①、F=②。それにしてもA、B、Cの正解はウソ臭く、Eは瑣末に過ぎませんかネエ。
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